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進学NEWS
2021.11.01

子どもが自宅外からの通学を希望したらどうする? 新生活にかかる費用とポイント

自宅外からの通学でかかる費用とは

最初から自宅外から通学する場合を見込んでいれば準備できているかもしれませんが、急に自宅外通学となった時のために、どのくらいの費用が掛かるのかご紹介します。

令和2年10月に公開された「教育費負担の実態調査」によると、自宅外通学を始めるためにかかった費用は1人当たり平均39.3万円。あくまでも平均ですから、当然それ以上かけた家庭もあります(下記グラフ参照)。

令和2年度自宅外通学を始めるための費用

(出典:日本政策金融公庫 令和2年度「教育費負担の実態調査」)
注:令和2年4月の入学時に自宅外通学を始めるためにかかったアパートの敷金、家財道具の購入費などの合計

50万円以上75万円未満が24.8%、75万円以上100万円が3.5%、100万円以上が7.2%と、この3つの範囲に含まれる方は約3割程度にのぼります。

この調査結果には、海外留学をあきらめた、自宅外からの通学をやめて自宅から通学することになった、学部を変更したなど、2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けたものも含まれていますが、ワクチン接種率の向上とともに、経済活動は今後活発化して、進路選択も再び多様になっていくはずです。

そうすると、海外や地元以外の学校への進学など、大きな環境変化を伴う進路に子どもが進む可能性があるときの心づもりとして、費用の額や準備方法、使える制度などの下調べをしておきたいものです。

親からの月々の仕送りは減少傾向

自宅外から通う学校に進学した場合、当初の費用だけではなく、月々の仕送りをどうするのかという問題があります。先ほどの調査結果を見てみると、年間平均90万円となっていますが、仕送り額0円の世帯も10.6%います。

子どもが自宅からは通えない学校へ進学したいというのであれば、子どもに「自活させる」という選択肢もあります。また、新型コロナウイルスの第6波が予想されているような状況で、家計を支援する制度は継続しています。たとえ仕送りで助けてあげられなくても、自活させる、支援策を利用するなどによって、自宅からは通えない学校への進学も可能だということです。

学生も利用できる支援策を知っておこう

2020年4月から始まった給付型奨学金や授業料減免については、他のコラムで説明していますので、そちらを参照してください。

2つの公的制度利用で、保護者負担ナシの進学はできる?
知っておきたい国の給付型奨学金制度

新型コロナの影響を受けた学生も利用できる支援策として、以下のような経済支援もあります。


支援制度 金額 対象となる人 申請先
①生活福祉資金の特例貸付(緊急小口資金) 20万円以内 新型コロナ感染症の影響によって休業や失業状態などになり、収入が減少して生活資金に困窮している方 お住まいの市区町村社会福祉協議会
②生活福祉資金貸付制度(教育支援資金) 大学の場合は月6.5万円以内(特に必要と認める場合、上限額の1.5倍まで貸付可能)。無利子、保証人不要 必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯 お住まいの市区町村社会福祉協議会
③住宅確保給付金 実施の家賃額を原則3か月間(延長2回まで)支給する制度 主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合など、離職・廃業と同程度まで減少している場合など 最寄りの自立相談支援機関
④新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付 原則として休業前賃金の8割(上限あり) 新型コロナウイルス感染症の影響により事業主から休業させられ、企業から休業手当の支払いを受けることができなかった方(学生アルバイトも対象になります。) オンライン申請と郵送申請。労働者の方から直接申請も可能(事業主経由での申請も可能)

(出典:文部科学省「新型コロナの影響を受けた学生等の経済支援)
筆者が抜粋して表を作成。

①の緊急貸付については、本来は返済が必要ですが、以下のような通達もされています。
「本貸付は公費を財源とするもので、償還(返済)が必要な制度です。ただし、大きな災害の被災、傷病などやむを得ない事情で返済が難しくなった場合は、償還(返済)の猶予や免除を申請することが可能です。今回の特例措置では、償還時において、なお所得の減少が続く住民税非課税世帯の償還(返済)を免除することができるとされています。」

覚えておきたいのは、「返済が必要なくなる」貸付になる可能性もあるということです。


このようなたくさんの支援があっても、子どもが利用できるのか、利用したことによるメリットやデメリットなどの判断ができなければ、利用ができないままです。自宅以外から通う学校へ進学させた場合、保護者ができることは仕送りだけではなく、政府や学校が用意している支援制度を利用できないかどうか、アドバイスしたり相談にのったりすることもできることを覚えておきましょう。

[當舎 緑]
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プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP®

一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。

子どもにかけるお金を考える会メンバー

http://childmoney.grupo.jp/

一般社団法人かながわFP生活相談センター理事

http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/

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