知っておきたい国の給付型奨学金制度
進学後の申し込みが可能に
「国の「高等教育の修学支援新制度」による給付型奨学金は、日本学生支援機構(JASSO)を通じて支給されます。高校3年生の時に在学している学校を通じてJASSOに申し込み(予約採用)をしますが、進学後に大学や専門学校を通じて申し込む(在学採用)ことも可能です。
令和2年度支援開始分の在学採用については、4月頃と9月頃に申し込みが予定されており、4月頃の申し込み分は4月から、9月頃申し込み分は10月から支給が開始されることとなっているので、記事公開時の2020年5月時点では9月申し込み分を忘れないようにするといいでしょう。
JASSOの奨学金は、長らく貸与型のみを扱ってきましたが、平成29年度から給付型の取り扱いが始まりました。この従来の給付型奨学金は、申し込み手続き時期が高校在学中のみとされていましたが、新たな給付型も同じと思い込んではいけません。せっかく給付対象になっているにもかかわらず、在学での手続きはできないと決めつけて給付を受けないのはもったいないです。
常に最新の情報を入手して、子どもと共有するようにしましょう。
「自宅外」の基準が厳格化
JASSOの奨学金は、学生の住まいと学校の種類、公私立の別によって支給される金額が決まります。
上記の給付型奨学金の表のうち、「自宅外」通学として認められる具体的なルールが公表されました。自宅から通学することが困難などの理由が必要で、一人暮らしをしている学生すべてが自宅外通学として認められるわけではないようです。
実家から学校までの通学距離が片道60km以上、実家から学校までの通学時間が片道120分以上、実家から学校までの通学費が月1万円以上などとされ、大学等に入学後、自宅外通学をしている証明書の提出を求められます。
制度に該当したことにより、給付型奨学金を利用することを前提として一人暮らしを選択する場合、「自宅外」の基準にも該当するかどうかを確かめることが必要です。
給付奨学金だけ休むこともできる
JASSOの給付型奨学金の受給対象になった人に対して、制度側が行う制限がいくつかあります。同じJASSOの貸与型奨学金を同時に利用する場合、無利子の第一種については授業料等減免額との兼ね合いで貸与額を減らされます。また、給付型奨学金と支援の目的が同様の他の制度との併給が行われる期間については、給付型奨学金の額をゼロとされてしまいます。
これらは、給付型奨学金の側での調整で、学生側が休みたいと希望しているわけではありません。給付型奨学金を受給できるのに「休む」ことを希望する必要があるのは、他制度との併用を認めていないJASSO以外の奨学金制度を利用したい場合です。JASSOの給付型奨学金よりも奨学生にとって有利な奨学金制度の対象になった場合、「高等教育の修学支援新制度」による授業料の減免は受けたいけれど、給付型奨学金は他を利用したければ、「休む」対応をとってもらえるのです。
保護者は、子どもがどのような制度を利用できるのかを調べ、いくつかの制度から選択できるのであれば、何が一番有利になるのかを一緒に考えてあげるといいでしょう。
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会