category:進路選択親子で読みたい
進学NEWS
2021.08.01
高校生の悩み相談室

どうして働かないといけないんですか?

高校生の皆さんとお話をしていると、働くことや社会に出ることについて、あまりいいイメージを持っていない方が多いように感じます。

確かに、ニュースやSNSなどを見ていると、失業率の増加、長時間労働の辛さについてなどネガティブな話題が溢れていますし、電車や街で見る疲れ切った大人たちの顔を見ていると、働くことや社会に出ることに対して不安になってくるのも分かる気がします。

今回は、そんな働くことについて一緒に考えてみたいと思います。

今の時代で働くということ

皆さんは、「人生100年時代」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
出版時に大変話題になったビジネス書「LIFE SHIFT -人生100年時代の人生戦略-」(リンダ・グラットン、2016年、東洋経済新社報)では、今高校生である皆さんの半分以上が100歳以上まで生きる可能性があると言われています。

つまり、皆さんは今までの世代よりも長く働きづづける必要があるのです。

そのような背景のなかで、働くことにネガティブな印象を持っていたり、実際働くことが辛かったりするような状態だと、仕事を続けることがなかなか難しそうですよね。
働くことについて少しでもポジティブな印象を、少なくとも苦ではないくらいにはなりたいものです。

ここで、改めて、そもそも働くとはどのようなことかをまずは考えてみたいと思います。

働くってどういうことなんだろう?

「働く」は辞書的な意味でいくと、「体や頭脳を使って仕事をすることや収入を得るための労働」を意味するようです。

これだとイメージがつきにくいかと思いますので、もう少し噛み砕いてみると、
「働く」とは「誰かと比べて得意だったり、物理的にできたりすることで誰かの役に立って、対価をもらうこと」と説明できるなと私は考えています。

例えば身近な例では、
・学校の先生は、一般の方より、教科や教育について知っていたり教えたりするのが得意なので、生徒さんの役に立って対価を得ている。
(最近ではYoutuberも自分の好きなことを発信して、視聴する人の役に立って対価を得ているので似た形ですね)
・荷物の配達スタッフの方は、一般の方より、体力があったり、遠く離れたところから物を効率的に運ぶことができる会社の輸送のシステムが使えたりするので、遠くから荷物を効率的に運んでもらいたい人の役に立っていて、対価を得ている。
というような感じです。

ということは、やや単純ではありますが「誰かと比べて、得意だったり物理的にできたりすること」を選ぶときに自分が楽しかったり、苦ではなかったりすることにしたり、楽しい、苦ではないと自分で捉えることができれば、
漠然とネガティブなイメージだった「働く」ことは、苦ではなかったり、楽しかったりするものにできるのです。

さらに、これまでの時代と比較し、ITサービスの向上によって、自分で仕事を創ったり、働く時間や場所も自由にできたりと、自分で工夫することで働くことを苦でないものや楽しいものにしやすい環境になり、「働く」ことのイメージがよりポジティブなものに変わりつつあると感じています。

ここで「ん? 自分が楽しかったり、苦でなかったりすることって何かな」と思われた方は、よかったら以前のコラムを参考になさってください。
「やりたいこと」がわからない
続・「やりたいこと」がわからない

実は働かないという選択肢もあるけれど

さて、ここまで、働くという全体でお話をしてきましたが、働かないという選択肢を取ることもできると思います。

例えば、以前キャリア相談を受けた方で、どうしても働きたくないので、投資をして暮らしてみようと思うという方がいらっしゃいました。

筆正直にいうと、私も「バリバリ働いて出世したい!」というよりは、「自分の得意な分野のことを続けて、自分も幸せで人の役にも立ち続けたい」という等身大の「働く」を実現したいと考えている人間なので、
働きたくないと思うなら、そうと決めて、可能になる方法を模索するのもありだと考えています。

ただ、様々な方の「働く」お話を伺うなかで、実感を持ってお伝えできるのは、
働くことでお金以外にも、素敵な人との出会い、以前できなかったことができるようになる喜び、好奇心がくすぐられる、人の役に立つ嬉しさ、時代に乗っているスピード感など、得られることがたくさんあるということです。

「社会はあなたが思っている以上に自由だし、自分次第でどうだってできるよ。」
社会に出たばかりの頃、人生の先輩に言われた、今も強く印象に残っている言葉です。

「働く」ということは、あなたが今思っている以上に、自由で、苦でなかったり、楽しかったりするものかもしれません。

ここまで読んでくださったあなたが少しでも「働くことや、社会に出ることも悪くないかもな」と思って進路選びをしてくださったら嬉しいです。

[中村 文香]
ayaka_nakamura.jpg
プロフィール : 中村 文香(なかむら あやか)

U-Discovery代表。国家資格キャリアコンサルタント。高校生からミドル世代まで、キャリアの転換期における意思決定や、周囲と協力しキャリアを築いていくためのサポートを行なっている。高校の進路選択では、人の心に関わる分野に興味がありながらも、就職で潰しがきくと、工学部を選択。北海道大学総合科学院総合化学専攻修了後、電子機器メーカーにて研究開発に従事。三十歳を目前に、今後のキャリアで本気で取り組みたいことを考えた結果、学生時代から関心のあったキャリア支援の道への転向を決意。同企業の人事部を経て独立。理系出身の分析力と大幅なキャリアチェンジの経験を活かした視点や、楽しみながらキャリアに取り組めるワークが好評。

インフォメーション