文系?理系?大学進学にかかるお金はどう違う?
親子で考える進路選択
- 関連トピックの最新記事はこちらから
- #スカラシップアドバイザー , #ファイナンシャルプランナー , #マネキャリサポーター , #合田菜実子 , #国家資格キャリアコンサルタント , #基礎心理カウンセラー , #授業料 , #文理選択 , #進学率 , #進路選択
進路を考えるとき「文系・理系どちらがいいのかな?」「理系は学費が高いと聞くけど、どれくらい違うのだろう?」と疑問に感じている高校生や保護者の方も多いでしょう。それには、大学での学び方や学校の設備、教育スタイルの違いが大きく影響しています。
費用面だけでなく、「何を学びたいのか」や「大学で学んだことを将来どう活かしていくか」という視点も、進路選択のポイントとして深く関わってきます。
今回は、文系・理系の大学進学にかかる費用と、進路選択のポイントについてお話しします。
文系・理系 それぞれ授業料はいくらくらいかかるの?
まずは、それぞれの大学に進学する際にかかる費用を、大学の種類ごとに見てみましょう。
【国立大学の授業料】
国立大学の授業料は文系・理系一律です。文部科学省が定めた標準額は、入学金282,000円、授業料535,800円(年間)となっています。医学部など授業料が高いイメージがある学部も含め、理系・文系による差はありません。
ただし、学部や内容によっては授業料以外に費用がかかる場合があります。特に理系では、「実験・実習にかかる材料費や消耗品」「専用設備や分析機器の使用料、光熱費」など実習費」が高くなる傾向があります。また、理系に限らず「フィールドワークや現地実習」の際には、交通費や宿泊費が自己負担となるケースもあります。
国立大学の授業料は基本的に同額ですが、追加費用が発生する場合がありますので志望する大学、学部のホームページなどで調べてみるようにしましょう。
なお、国立大学では標準額よりも高い大学もあります。国立大学では標準額をもとに、最大で約20%増(最大642,960円)まで授業料を独自に設定できることが認められています。東京大学、千葉大学や一橋大学他、一部の大学はこの上限までの授業料を採用しています。
【公立大学の授業料】
公立大学の授業料は、国立大学の標準額に準じて各大学が設定しています。大学がある地域の在住者や地元の高校出身者については入学金を割安に設定している大学も多いです。
【国公立大学の学生納付金】

公立大学平均額については「2024年度 学生納付金調査結果(大学昼間部)」をもとに筆者が作成(単位 円)
※実習費、その他費用は含みません。
参考サイト
公立大学平均額「2024年度 学生納付金調査結果(大学昼間部)」
学生納付金調査結果
【私立大学の授業料(平均額)】

※実習費、その他費用は含みません。
※1万円未満を四捨五入しているため、それぞれの金額と合計と4年間の納付金は一致しない場合があります。
私立大学の場合、理系・文系で学費に大きな差があります。文部科学省の令和5年度「私立大学入学者に係る初年度学生納付金等 平均額(定員1人当たり)の調査結果」によると、文系(文科系学部)の初年度の費用は約119万円、2~4年目は授業料や施設設備費がかかりますので、4年間で合計額は約411万円となっています。
一方、理系(理科系学部)の初年度の費用は約153万円、2~4年目も含めると、4年間の合計額は約542万円です。文系と理系(医歯系学部を除く)とを比べると、約131万円の大きな差があります。
医歯系学部は6年制が多く、初年度費用は482万円、6年間の合計は約2,354万円にもなります。芸術系学部も比較的高い傾向があります。
文系・理系にかかわらず、学部や学びの内容によっては追加費用が発生することもあります。詳細は志望校のホームぺージなどで確認してください。
参考サイト
文部科学省 私立大学など等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果
令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について
理系は大学院の進学率が高い
理系の学生は、文系に比べて大学院(修士課程・博士課程)に進学する割合が高いことも押さえておきたい点です。大学入学前から大学院進学を決めている人もいますが、在学中に「もっと学びたい」と感じたり「教授から勧められた」などの理由から、大学院進学を決めるケースも少なくありません。
大学院に進学すると、通常2年~5年程度の在学期間があり、その間の授業料などの費用が別途かかります。
文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によると、理系の進学率は、理学44.3%、工学38.6%、農学26.8%と高い一方で、文系は、人文科学4.5%、社会科学2.8%程度と大きな差があります。
理系の学生が大学院に進学する傾向が高い理由として、就職での有利さや、研究職や専門職を目指す傾向が根付いていることが挙げられます。
参考サイト
文部科学省: 令和5年度学校基本統計結果の概要
理工農系学部に進学する場合、学費が軽減される制度
私立大学の理工農系学部は、文系学部に比べて学費が高い傾向があります。そこで、2024年度からは、所得要件などの条件を満たした場合に、文系学部との授業料差額分を補助する授業料減免制度が拡充されました。該当した場合、私立大学の理工農系学部の学費が年間で約23万円軽減されます。
目安として、年収600万円程度までの世帯では、入学金約86,700円、授業料(年額)約233,400円が減免されるしくみです。
対象となる学部・学科については下記の「理工農系学部学科の対象機関リスト」で確認できます。
参考サイト:文部科学省
高等教育の修学支援新制度 理工農系学部・学科の対象機関リスト(私立学校)
進路選択は「やりたいこと」を大切に、親子でじっくり話し合いましょう
文系と理系の学費の違いについて見てきました。特に私立大学の理系は、文系に比べて学費が高く、大学院進学も含めると教育にかかる費用が大きくなる傾向があります。
しかし、一番大切なのは「自分が何を学びたいのか」、そして「大学での学びを将来のキャリアにどう活かすか」です。
大学進学にかかる経済的負担は学校や学部によって大きく異なりますが、奨学金など支援制度も年々充実しています。費用面も考慮しながら、「やりたいこと」を軸に親子でじっくり話し合い、進路を決めていきましょう。

- プロフィール : 合田 菜実子(ごうだ なみこ)
-
ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント 和光大学特任准教授 スカラシップアドバイザー(日本学生支援機構) 日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター 基礎心理カウンセラー
子育て期間中にファイナンシャルプランナー資格を取得。現在は、お金とキャリア教育の専門家(マネキャリサポーター®)として、若者たちの豊かな未来のために「金融経済教育」に積極的に取り組んでいる。金融庁関連、日本FP協会主催セミナーの他、大学や小中高校におけるお金の授業、高校での教育資金準備講座など講演多数。著書は『教えて合田先生!18歳までに知っておきたいお金の授業』(C&R研究所) 『子育て主婦が知っておきたいお金の話(経法ビジネス出版)』『小学生でもわかる、お金にまつわるそもそも事典』(C&R研究所 共著)など。
JFLEC (金融経済教育推進機構)認定アドバイザー
アドバイザー紹介ページ
日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター
https://www.jafp.or.jp/personal_finance/high/inst_disp/
和光大学特任准教授
https://www.wako.ac.jp/faculty-postgraduate/economics-business/economics/teacher.html
ウーマンライフパートナー会員 Women Life Partner
https://wlp.or.jp/
- オフィシャルWebサイト
- https://www.fpcareer.net/