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進学NEWS
2025.06.02

私立理工農系の大学生・専門学校生の教育費を支援! 年収600万円までの世帯は文系との差額を免除

令和6年度より「高等教育の修学支援新制度」の支援対象が広がり、私立大学・専門学校等の理工農系の学科に通う学生に対して、入学金および授業料の支援がスタートしています。年収600万円程度(世帯人数等によって異なる)いわゆる中間所得世帯までの学生が対象です。対象者や金額について、また対象学校の確認方法と申請の方法など、詳細を解説いたしますので、理系に進むことを検討している高校生の皆さんと保護者の方は、ぜひこの記事をご一読ください。


対象は中間所得層世帯の学生

令和2年度からスタートした「高等教育の修学支援新制度」は住民税非課税および非課税に準ずる世帯の学生に対し、原則「給付奨学金」と「授業料等減免」のセットで進学を支援しています。新たに令和6年度から「私立理工農系に進学する学生」は、年収約600万円の世帯(中間所得層)までなら、一定額まで「授業料等減免」を受けることができるようになりました。支援を受けるには「日本学生支援機構」に「給付奨学金」の申込みをし、採用される必要があります。それでは、高校3年生が「予約採用」で申込む場合の選考基準を説明します。

出典:奨学金事業の充実:文部科学省

(令和6年度~ )安心してこどもを産み育てられるための奨学金制度の改正
授業料減免等の中間層への拡大 ~学部生向け~

給付奨学金の選考基準は学力基準と家計基準の2つ

1.学力基準(高校3年生で予約採用で応募する場合)
①高校等における第1学年から申込み時までの評定平均値が3.5以上(5段階評価)
②学修意欲を有することが確認できること

2.家計基準

①資産基準
学生本人および生計維持者の資産合計額が5,000万円未満であること
②収入基準
学生本人および生計維持者の住民税情報から以下の計算式を使用し、支援の区分を判定します。第1区分は住民税非課税世帯、第2区分および第3区分は住民税非課税に準ずる世帯に該当し、当初より支援の対象世帯となっています。

第4区分が、新たに令和6年度から支援対象となった中間所得相当の世帯です。【表1】の年収はあくまでも目安として例示しました。4人世帯で学生本人、両親のうち1人が働いている世帯のおおよその上限額です。収入基準に該当するか調べるには、日本学生支援機構HP内の「進学資金シミュレーター」を利用してみましょう。


進学資金シミュレーター(日本学生支援機構)


 ◇計算式
 支給額算定基準額=課税標準額×6%-(市町村民税調整控除額+市町村民税調整額)



【表1】収入の目安と支援区分 202506ー02.png


進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準 | JASSO


対象となる学部・学科とは

文部科学省において確認と審査を行い、対象となる私立学校の理工農系学部・学科のリストを公表しています。リンク先から志望する学校の学科が対象となっているか確認してください。学部全体ではなく、学科単位での認定となっていますから、しっかりチェックしましょう。

また学科の選定は理系学部に限られておらず、授与する学位の分野に「理学・⼯学・農学」が含まれれば対象です。2,365学科が指定されており、例えば、多摩美術大学の美術学部環境デザイン学科も対象リストに入っています。(令和7年4月現在)


理工農系学部学科の対象機関リスト(令和7年4月1日)(文部科学省)

支援金額とタイミングについて

高校3年の予約採用で、給付奨学金の第4区分に認定され、対象に指定されている私⽴理⼯農系の学科に入学した場合、私立⽂系学部との差額が支援されます。なお、第4区分は高等教育の修学支援新制度のうち「授業料等減免」のみが対象で「給付奨学金」はありません。
(多子世帯をのぞく。多子世帯の詳しい解説は下記をご覧ください)
令和7年度改定 多子世帯の大学等授業料の無償化をわかりやすく解説

支援の上限は学校の種類によって異なります。私立の大学、短期大学、専修学校(専門課程)、高等専門学校(4〜5年生)の「入学金」および「授業料」が減額される上限額は、それぞれ【表2】の通りです。

実際に支援を受けるには、進学先の学校に必要書類を提出し、進学届の提出に必要なIDとパスワードをもらって下さい。そのID等でインターネットより日本学生支援機構に進学届を提出して認定を受けた後、入学金等が減額されます。

つまり、支援がスタートするのは入学後ですから、進学前に支払う「入学手続時納入金」(入学金、前期授業料、施設費の半分程度)は、いったん全額支払う必要があります。なお、学校によっては入学金等の支払いを猶予する制度がある場合も。詳細は進学先の学校で確認してください。



【表2】理工農系支援額(上限) 202506ー03.png 令和6年度からの奨学金制度の改正(授業料減免等の中間層への拡大)P2
令和6年度からの「高等教育の修学支援新制度の中間所得層への拡大に係る対応について(第4区分)」 | JASSO

まとめ

高校3年生で日本学生支援機構に「予約採用」として給付奨学金の申請をする時点では、対象校に進学できるかわからない状況です。その場合でも、予約採用での申込みを検討してはいかがでしょうか。進学後にも「在学採用」といって、進学先の学校を通じて申請することは可能です。その場合、申請月の4月から審査され、採用決定となるのは6・7月ごろとなります。
予約採用であらかじめ第4区分の採用候補者になっていれば、進学届など手続きをスケジュール通り実行すれば、4・5月に受け取ることが可能となります。進学時期は何かとお金がかかる時期であり、早めに受け取れると家計も助かることでしょう。また合格したいというモチベーションにつながるかもしれません。返還の必要がない支援を活用して、資金面の不安を減らしたいですね。

[山内 真由美]
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プロフィール : 山内 真由美(やまうち まゆみ)

ファイナンシャルプランナー(CFP®・1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント

中学生の双子の母。ファイナンシャルプランナー資格を取得後、都市銀行の支店にて個人向けに資産運用の案内を担当。現在は、東京都内の自治体にてひとり親のための家計相談、高校の保護者会にて奨学金や教育ローンの活用方法について講演している。また資産運用に関するWeb記事の執筆およびムック本の監修を担当。著書は『FPママの親と子で学ぶお金のABC・13歳からのマネーレッスン本』(河出書房新社)



J-FLEC (金融経済教育推進機構)認定アドバイザー

https://www.j-flec.go.jp/advisors/

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