専門学校にかかる費用は?何を学ぶかでどう違う?
高校卒業後の進学先として、大学や短期大学の他に「専門学校」という選択肢があります。専門学校とは、実践的なカリキュラムを通して職業に必要な能力を習得するための高等教育機関のことを指します。文部科学省の学校基本調査(2023年度)によると、専門学校への進学率は21.9%で、高校生の約5人に1人が専門学校に進学しています。
専門学校といっても、学校によって学ぶ内容はさまざまですし、費用も大きく異なります。ここでは専門学校の特徴と進学にかかる費用について解説します。
専門学校とは
専門学校(専修学校専門課程)とは、仕事をするために必要な知識、技術、資格などの習得を目指す「職業教育機関」のことを言います。前述の学校基本調査(2023年度)によると、日本全国に2,693校あり、55万人程度の学生が学んでいます。
2009年頃より専門学校進学率は上昇傾向にありましたが、2022年からは減少傾向に転じています。一方、大学進学率は2023年の調査で57.7%に達し、8年連続で過去最高を更新しています。また、大学・短大・専門学校を合わせた「高等教育機関」への進学率も84.0%に達しており、これも過去最高です。これにより、高校卒業後も何らかの学校で学び続けることが一般的になりつつあることが分かります。
専門学校の修学年数は教育内容に応じて様々ですが、2年制の学科が最も多くなっています。一定の要件を満たせば専門学校を卒業した後、大学や大学院、専門職大学などへ編入をすることもできます。卒業すると「専門士(2年制以上)」の資格が取得でき、この資格は、特定の分野において、高度な知識やスキルを持っていることの証明になります。そのため、企業に就職する際に大きなアピールポイントとなります。
専門学校の入学資格としては「高等学校卒業程度」の能力が求められます。入試方法は大学入試と同様に「一般選抜」「学校推薦型選抜」「AO入試(総合型選抜)」の3つに分けられます。「AO入試」の場合、出願要件として、事前の説明会やオープンキャンパスへの参加が必須とされている学校もありますので注意が必要です。
出所:文部科学省サイト 専門学校の事が知りたい|専修学校 #知る専 (mext.go.jp)
専門学校の種類とかかる費用
専門学校で学べる分野は多岐にわたりますが、大きく下記の8分野に分けられます。
①工業(土木・自動車整備・情報処理・IT・電気・ゲーム・CGなど)
②工業・農業(バイオテクノロジーなど)
③医療(看護・診療放射線・理学療法・はり・マッサージ指圧・歯科衛生など)
④衛生(栄養・調理・製菓・美容等など)
⑤教育・社会福祉(保育・教育・介護福士・社会福祉など)
⑥商業実務(簿記・ビジネス・旅行・ホテル・医療秘書・医療管理事務など)
⑦服飾・家政
⑧文化・教養(語学・美術・デザイン・写真・音楽・演劇・法律・スポーツ・動物・アニメ声優・ゲーム・日本語科など)
下記は「代表的な学科区分ごとの初年度納付金を比較した表」です。初年度納付金の平均額(令和5年度)は、128.6万円ですが、学ぶ内容によって費用が大きく異なることが分かります。
どの分野も夜間コースがありますが、総平均でみると夜間コースは100.7万円で、昼間コースの128.6万円と比べると低い水準になっています。
【学科区分ごとの初年度納付金】 ※各科目ごとの平均値を集計しているため、横の合計は一致しない。金額表示は千円以下四捨五入
出所:令和5年度 学生・生徒納付金調査(専修学校各種学校調査統計資料 調査2)をもとに筆者が作成
「看護」と「理学(作業)療法」は同じ「医療分野」に該当しますが、「看護」の総額が119.2万円であるのに対し、「理学(作業)療法」は182.9万円と、初年度だけでも約64万円差があります。
入学金は初年度のみ支払いますので、2年目以降は「入学金」以外の合算額になります。総額は、修学年数でかけ合わせて算出することができます。
【納付金の比較(修学期間3年間の場合)】
看護 | : | 初年度119.2万円 2・3年目102.4万円 3年間の合計額 324.0万円 |
理学(作業)療法 | : | 初年度182.9万円 2・3年目147.5万円 3年間の合計額 477.9万円 |
→ 「理学(作業)療法」の方が 150万円以上 高くなります。
その他、「製菓」は初年度171.9万円で高い傾向があります。また、最も低いのは「簿記・ビジネス」関連で110.9万円、上記の表には記載していませんが「医療管理事務」関連も110.8万円と低くなっています。
一概には言えませんが、「少人数で学ぶ学科」や「設備費や材料費が多くかかる分野」は納付金が高い傾向があります。一方で、「大人数が一緒に座学で学ぶ学科」は、比較的納付金が低い傾向があると言えます。
専門学校への進学資金準備に関するポイント
①奨学金や修学支援制度をうまく活用しよう
専門学校に進学するための資金準備が厳しい場合、要件を満たせば「奨学金」を利用することができます。「令和5年度 奨学金・学費減免制度 調査」(専修学校各種学校調査統計資料)によると、全体平均で約34%の学生が奨学金を利用しています。「日本学生支援機構の奨学金」や「学校独自の奨学金制度」についても調べ、うまく活用しましょう。
また同調査によると、約1割の学生が「修学支援制度」を利用しています。要件を満たせば「高等教育の修学支援新制度」も利用できます。
令和5年度 奨学金・学費減免制度 調査(専修学校各種学校調査統計資料 調査8)
高等教育の修学支援新制度:文部科学省 (mext.go.jp)
②特定の分野に限定した資金支援制度もある
看護師や保育士、介護系など、特定の分野に進学する場合の支援制度もあります。
諸条件を満たした場合は利用できますので、確認してみると良いでしょう。
看護師や保育士など、介護・福祉系に進学したい方のための資金支援制度 | 進学費用 | 親子で考える17歳の進路 (naninaru.net)
③同分野であっても、学校によって納付金に差がある
先ほどの表では分野ごとの平均値を示しましたが、同じ分野でも学校によっても納付金額に差があります。ご自身が進学したい専門学校のホームページなどをいくつか見比べ、学費を確認するようにしましょう。
④授業料や実習費以外にかかる費用も確認しよう
予想外に費用がかかるケースもあります。例えば、IT系の学校であれば「パソコン検定など資格取得のための費用」、美容関連であれば「ハサミやメイク道具などの購入費用」、語学や旅行関連であれば「海外研修費用」など、学ぶ分野特有の費用がかかるケースもあります。学校情報と同様に、進学を決める前に確認するようにしましょう。
やりたいことが実現できる専門学校に進学しよう
本コラムでは専門学校の特徴と、進学にかかる費用を中心にみてきました。
専門学校には、その仕事をするために必要な「知識、技術、資格などを習得できる」というメリットがありますが、大学とは異なりその分野に特化した「職業教育機関」であるため「入学後の進路変更が難しい」というデメリットもあります。
費用面での比較は重要ですが、それ以上に大切なのは「自分に合った進路かどうか?」です。「将来の職業として本当に学びたいことなのか」や、同じ分野であっても「その学校が自分に合っているのか」など、入学後・卒業後の自分をしっかりイメージした上で進路選択をするようにしましょう。
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- プロフィール : 合田 菜実子(ごうだ なみこ)
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ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士) 国家資格キャリアコンサルタント スカラシップアドバイザー(日本学生支援機構) マネキャリサポーター® 基礎心理カウンセラー
大学生の母。子育て期間中にファイナンシャルプランナー資格を取得。現在は、お金とキャリア教育の専門家として、子どもたちの豊かな未来のために金融経済教育に力を入れいてる。金融広報中央委員会、日本FP協会主催セミナー他、大学や小中高校におけるお金の授業、高校での教育資金準備講座など講演多数。著書は『教えて合田先生!18歳までに知っておきたいお金の授業』(C&R研究所) 『子育て主婦が知っておきたいお金の話(経法ビジネス出版』『小学生でもわかる、お金にまつわるそもそも事典』(C&R研究所 共著)など。
日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター
https://www.jafp.or.jp/personal_finance/high/inst_disp/
WAFP関東女性FPの会 理事
https://wafp-k.net/
- オフィシャルWebサイト
- https://www.fpcareer.net/