子どもがアルバイトをしたことで扶養からはずれる?そんなときに覚えておきたいこと
コロナ禍ではアルバイトをする学生も減っていましたが、2024年はその影響も薄れ、人材不足もあり、大学生がアルバイトに困らないという環境が整っていることが、2024 年 3 月 4 日に全国大学生活協同組合連合会からプレスリリースされた「第 59 回学生生活実態調査 概要報告」などからも確認できます。
今回は大学生の子どもがアルバイトを頑張ったことで収入が増加し、「ひょっとして扶養を外れるかも!?」と心配な時に知っておきたいお金のお話をします。
大学生が働くのは何のため?
冒頭で述べたように、大学生のアルバイト就労率と収入はコロナ禍前の水準に戻りつつあるようです。
学生アルバイトは最低賃金で働くことも多いですが、近年は、最低賃金も上昇が続いています。最低賃金は、令和5年10月からは、東京都1,113円、神奈川1,112円、埼玉1,028円、千葉1,026円。その他、愛知や関西圏でも1,000円以上と、都市圏では、働く時間も増えているけれど、そもそも時給単価が上昇していることで、学生のアルバイト収入がアップしているのでしょう。アルバイトの主な目的で考えられるのは、旅行やレジャー、生活費ですが、学生は、収入アップを喜んでも「稼いだことによって損をする」とは考えてないはずです。
目的をもって大学生が働くのはいいことなのですが、場合によっては、103万円を超えると、税金を支払うこととなったり、親の扶養控除も無くなって、親の所得税が増えたり、もしくは社会保険の扶養を外れるなどの影響が出始めます。アルバイト収入が増えすぎると、そのすべてを目的のためだけに使うことはできなくなるということは覚えておきましょう。
アルバイトを頑張ったときに起こりうるデメリットとは
大学生の子どもがアルバイトを頑張った時には、「収入が増えた」と単純に喜んでいいのでしょうか。大学生は、自宅から通学する場合と、下宿をしながら通学するケースがあるでしょう。ここで、忘れてはいけないのは、「扶養」の対象かどうかという点です。
扶養親族とは、配偶者以外で納税者に扶養されている親族のことです。 納税者と生計を一にしていること、所得金額が48万円以下であることなどが扶養親族に該当するための条件となります。(配偶者の場合には、所得が48万円を超えても一定の控除があります。)ただ、これはあくまでも「税法上」のお話。
「社会保険上」の扶養とは、認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、「認定対象者の年間収入が130万円未満」、かつ、「被保険者の年間収入の2分の1未満」が条件です。
一方、認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、「認定対象者の年間収入が130万円未満」、かつ、「被保険者からの援助による収入額より少ない場合」が条件です。つまり下宿をしている大学生は、実家からの援助額がどれくらいかという点もポイントとなります。
「扶養」のままでいるかどうかは、子どもだけではなく、親にも影響がありますので、収入が上がったと喜ぶだけではなく、「もし扶養の範囲を超える収入になったらどうなるのか」を考えつつ、アルバイト収入を上げていくことが必要になるでしょう。
子どもだから「知らなくてもいい」というのは無責任
前段のように、学生が親の扶養を外れた場合どうなるのでしょうか。
社会保険の目安である130万円を超える年間収入があったとしましょう。国民年金の保険料は月額16,980円(令和6年4月時点)、国民健康保険料は年間222,968円(東京都保健医療局:令和6年度確定係数に基づく1人当たり保険料額 渋谷区の場合)ですので、1か月の社会保険料負担は約35,560円となります。
そもそも、大学生は国民年金の「学生納付特例制度」を利用して、保険料を支払っていない場合も多いですが、これはあくまでも、「本人の所得が少ない」ことを前提として、「今は納付を猶予しているけれど、将来的に社会人になったらその間の保険料を追納してね。」という制度です。収入があるのに、社会保険料を免除してもらえるとは思わないほうがいいでしょう。
今は成人が18歳となっていますので、大学生は「成人」として扱われ、親であったとしてもお金の話は強く言えないということもあるかもしれません。また、親の時代と異なり、こうしたお金の話は「パーソナルファイナンス」などといって学校の家庭科の授業などで説明されることもありますが、それで完璧に理解できる人ばかりではありません。
18歳成人となったことで、各種契約も、クレジットカード作成も子ども自身のみでできますがキャッシングやリボ払いには「手数料」がかかること、国民年金など学生の納付特例は追納しなければ、将来の年金が減額されること、など、わざわざ「言わなくてもわかっているだろう。」と思い込んで、お互い「大人だから」と触れないままなのは危険です。
「今知らなくてもいい。どうせ社会に出たらわかるから。」は無責任です。まだ親のすねを多少ともかじっている学生だからこそ、親子でできるお金の話もあります。アルバイト収入をきっかけに、ぜひ親子でお金の話をしていただきたいものです。
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- プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)
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社会保険労務士。行政書士。CFP®
一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
http://childmoney.grupo.jp/
一般社団法人かながわFP生活相談センター理事
http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/
- オフィシャルWebサイト
- http://tosha.grupo.jp/