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進学NEWS
2024.04.01

ここが家計の見直しどき。新年度は教育費の見直しから始めよう。

文部科学省の学校基本調査(令和5年12月20日公表)によると、高校卒業後の大学(学部)・短期大学(本科)進学率は61.1%となり、過去最多を更新しました。高等教育機関への進学は、親として子どもに勧める普通の選択肢となってきたようです。そのため、親の世代よりも確実に教育費がかかります。ただ、「かかるのは当然」と嘆くばかりでは、教育費が家計を圧迫し続けます。4月は新生活が始まる時期です。ここまでかかった教育費を考えつつ、新年度だからこそ家計の見直しをしましょう。

いちばんかかるのは「受験から入学」まで

一般的に、「教育費を貯める」と言って、目標とする「教育費」というのは、大学進学後の教育費と考えている方は多いはずです。けれど、全国大学生活協同組合連合会から公表された「2023年度保護者に聞く新入生調査」を見てみると、受験から入学までの費用準備が困るという悩みが目立って増えているようです。つまり、教育費の準備をするときの「教育費」とは入学前からの費用も加算されることがわかっていない方が多かったということが裏付けられます。

この調査によると、受験から入学までにかかった費用は、国公立・自宅・文科系の1,331,100円から最も多い私立・下宿・医歯薬系3,073,000円まで様々です。大学入学前に必要な費用といっても、日常生活費の中から出すには多い金額ですから、貯蓄を切り崩す要因となっています。予定と違って多く使ってしまいがちな理由は、教科書や教材、パソコンの費用や受験料まで含まれているからです。新年度は既に受験が終わっている、もしくはこれから受験をする、教育費の変化が一番大きい時期だからこそ、家計の見直しどきといえるのです。

不足した費用についてどう準備したかを整理しよう

この調査では、子の受験から入学までの費用面で準備・工夫したことが回答されており、
①準備した学資保険や進学用貯金
②貯蓄切り崩し
③奨学金を申請
④自宅通学にさせた(受験校の変更)
⑤受験数を抑えた
という方法があげられています。このうち、準備してきた学資保険や貯蓄などで足りたのであればいいのですが、それ以外の方法、②か③なら家計の見直しは喫緊の課題となります。

②の貯蓄を切り崩したのなら、貯蓄していた本来の目的が老後資金なのか、他の兄弟の教育資金なのか、どの項目に影響があるのかを振り返ってみましょう。目的をはっきりさせることで今後の家計の見直し方針がわかります。

③の奨学金の申請で準備したのであれば、親子で奨学金返済方法を話し合うことが必要です。これについては、他のコラムでもお話ししていますので、そちらをご参照ください。奨学金については、懸念事項があります。日銀のマイナス金利解除が発表され、今後は金利の影響で奨学金の返済額が多くなることが予測されます。日銀総裁からの発表では「急激な金利変化はない。」とのことでしたが、奨学金は借金ですから、将来的なリスクを親子で自覚しておく必要があります。

他の項目に影響が出る場合の家計の見直し

受験の費用がかかりすぎて、老後資金を取り崩してしまった場合の家計見直しを考えてみましょう。以前、さまざまなメディアで取り上げられた「老後2000万円問題」を覚えている方も多いでしょう。2000万円が必要な人ばかりではありませんが、出産年齢が上がると、子どもの教育費が終わってから親の老後資金を準備しても間に合わないということは断言できます。

老後資金の準備方法の基本は、「いつまでに」「いくら必要なのか」と「公的年金」との差額を計算することからです。50歳以上であれば、ねんきんネットで将来の年金が試算できます(参考:日本年金機構)。このまま60歳まで同じ働き方をするのか、それとも65歳までに転職して給料が変わった場合など、詳細な条件を設定して、親が将来受け取れる公的年金が試算できます。この公的年金額を見て、その金額で老後の生活が可能なのか、やっぱり不足するということであれば、老後資金のための積立金額を増やしましょう。

次に、他の兄弟の教育費分まで使ってしまった方は、兄弟の進路を見直して、受験前から入学までの費用として再計算しましょう。上の子で経験したからこそ、受験からかかる時期と費用を計算し直せるはずです。

今年の春は、物価高だけでなく「賃上げ」がニュースとなり、明るい話題となっています。どれだけ賃上げされるのかは親の勤務先次第となりますが、ここで「賃上げされた。」と喜ぶだけでなく、賃上げ分から貯蓄するのは、老後資金のためか、他の兄弟の教育費のためか、目的をはっきりさせておきましょう。

政府の少子化対策を受けて、支援が受けられるからと教育費の準備が少しおろそかになっている方もいるかもしれません。ただ、支援される「学費」だけが子どもの教育費ではありません。新年度の始まりは、教育費と家計を見直してみませんか。

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[當舎 緑]
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プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP®

一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。

子どもにかけるお金を考える会メンバー

http://childmoney.grupo.jp/

一般社団法人かながわFP生活相談センター理事

http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/

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