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進学NEWS
2024.03.01

奨学金を借りる時に子どもと話しておきたいこと

最近、少子化対策のため多くの財源が支出されることが政府で閣議決定されたせいか、世間話の中で「子どもの教育費は準備しないでもいい。」「どうせ奨学金があるからなんとかなる。」などと楽観的におっしゃる方がいます。

子どもの教育費をどれくらい準備するのかは、進路によってさまざまで、正確にわからないのは当然ですから、最も準備しづらい費用であることは間違いありません。大切なのは、奨学金や教育ローンを借りることを想定するなら、「返す」ことも併せて教えることです。
今回は、子どもの教育費として奨学金や教育ローンに頼る場面で子どもと話しておきたいことをお話しします。

「奨学金は受け取ってありがとう、というだけの支援ではない」

高校進学の就学援助は、公立だけではなく、私立学校への進学に対しても幅広く行われているおかげで、「奨学金を申請する」という行動へのハードルは低くなっているように感じています。そのせいか、申請時点で、申込基準などは確認するものの、その後の注意点まで親子で話し合うことは少ないでしょう。

確かに給付型の奨学金ならば、返済する必要はありませんが、家計基準や学力基準はあります。今後、生計維持者の賃上げや共働きによる家計収入のアップなどで家計基準から外れることもあるかもしれません。すべての教育費が給付型でまかなえない事態を想定し、貸与型の奨学金についても子どもに説明しておくべきでしょう。奨学金は「自分のお金ではない」のです。

貸与型の奨学金、つまり借金となると、返済が滞れば、もちろんデメリットがあります。主なものとしては、延滞金が請求されたり、ブラックリストに登録されるという点が挙げられます。いわゆる「ブラックリスト」とは、奨学金の返済が2回以上滞った時に信用情報機関に登録されることを言います。奨学金を借りるハードルが低ければ、返さないことへの罪悪感も少ないかもしれませんが、ブラックリスト入りすることに対するデメリットはとても大きいものです。

「滞納したときの怖い話」

ブラックリストに登録されると、何が困るのかも説明しておきます。具体的には、新たなクレジットカードが作れなかったり、自動車ローンや住宅ローンなど新たなローンが組めない、そしてスマホの割賦契約が組めないなど、デメリットはいくつも挙げられます。

いまや最新のスマートフォンは10万円を超える時代。契約後2年経過すると、残債の負担を減らしてくれるというお得な買い方も多いことから、最新機種を一括で支払うということはかなり少ないでしょう。気軽にできると思えるこんなスマートフォンの分割払いすら認められないこともありえるわけです。

怖い話はまだあります。奨学金の返済を延滞すると、「督促」されます。この督促により定められた返済期限を過ぎてもなお返済しない場合、裁判所に支払督促の申立てがされ、最終的には、強制執行されることもありえます。毎月のお給料が差し押さえられたり、せっかく手に入れた車を手放す羽目になるかもしれません。

さらに、支払督促以降の手続にかかった費用は、返済者の負担となりますので、最終的には、督促費用+延滞金+利息(第二種奨学金の場合)+奨学金(元金)と、本来の返済費用よりも多くの金額を支払うことになるでしょう。

「奨学金と教育ローンを併せて借りる場合、親子ですり合わせておきたいお金の方針」

奨学金は入学後に支払われるお金ですので、入学金やパソコン代、教科書代など、入学前にかかる費用を賄うため、教育ローンを併せて申請する場合、親子ですり合わせておきたい留意事項も覚えておきましょう。

まず、「利用対象者」は、教育ローンが「保護者」、奨学金は「学生本人」となります。そして、受け取り方は、教育ローンは一括で、奨学金は分割で受け取ることとなります。教育ローンは一括ですので350万円(日本政策金融公庫で借りた場合の上限額 ※一定の要件に該当する場合は450万円)、奨学金は月額1~12万円を受け取る流れです。

そうなると、例えば「入学金と前期の授業料、パソコン代は教育ローンから」「月々の奨学金は手を付けずに置いておいて、後期の授業料に」などと親子で方針のすり合わせをしておかないと、せっかく受け取ったお金が、生活費に回ってしまうという事態もありえます。

夫婦共働きで財布が別々のケースでもよくあることですが、それぞれ別の口座に振り込まれることでお互いの収支がわかっていないと、無駄遣いが多くなることがあります。ここでしっかりと進学後の収入と支出を計算して、少しでもゆとりが出るようなら、奨学金の繰上返済などをおこない、大学卒業後の新社会人生活が少しでも負担の軽いものとなるよう、親子でお金の話をしておきたいものです。

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[當舎 緑]
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プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP®

一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。

子どもにかけるお金を考える会メンバー

http://childmoney.grupo.jp/

一般社団法人かながわFP生活相談センター理事

http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/

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