「学生=親の扶養」とは限らない?親子で知っておきたい社会保険と税金の基本
学生なら親の扶養であることは当然だと思っている方は多いかもしれません。ただ、年々上昇する最低賃金により、学生が得られるアルバイト収入が想像以上の金額となるケースが増えています。例えば、春休みや夏休みなどの長期休暇の間に集中して働いた場合、一時的に月収が10万円や15万円を超えるようなケースもあります。そうなると、社会保険料もしくは税金を支払う必要が出てくることもあります。今回は子どもがアルバイト収入を得ている場合における、社会保険や税金の仕組みについて解説します。
扶養の定義の違い。社会保険は今後の見込み、税金は過去の実績を見る
「扶養」とは誤解されやすい言葉で、「扶養の範囲で働きたい」という言葉には様々な意味があります。そもそも「社会保険上の扶養」と「税法上の扶養」とは、それぞれ判定基準が異なるのです。まず、社会保険上の扶養の定義は、原則として年間収入が130万円未満です。この金額は年間の収入見込みですので、長期休暇などでアルバイト収入が増えたとしても、一時的な増加であれば今後長期休暇の終了によって収入は下がるので、見込みとして130万円未満ならそのまま扶養でいられます。この130万円ですが、令和7年10月に、扶養認定を受ける者が19歳以上23歳未満の場合は、年間収入130万円未満から150万円未満に変わりました。一方、税法上の扶養は、原則として「その年の1月から12月まで」の実績(実際の所得)に基づいて判定されます。なお、税金と社会保険では扶養の基準が異なるため、「社会保険上は扶養になっているが、所得税上の扶養からは外れている」という状態もあり得るのです。
19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります|日本年金機構
親の扶養でなくなるとどうなるの?
もし、学生である子どもが扶養から外れるとどのような影響があるのでしょうか。まず、社会保険ですが、お子様自身で国民健康保険料や国民年金保険料を支払う必要があります。国民年金保険料は定額の17,920円(令和8年度)ですが、国民健康保険料は主に所得割や均等割などで構成され、計算方法は自治体ごとに異なります。均等割は世帯の国民健康保険の加入者数に応じて計算されるため、同じ世帯に国民健康保険の加入者が複数いるとそのぶん保険料は高くなります。また、税法上の扶養から外れると、学生本人に所得税と住民税の支払義務が生じるだけでなく、親もそれまで受けていた扶養控除を受けられなくなります。結果として、親子ともに税負担が増加することとなります。税法上、16歳以上の子どもと生計を一つにしている場合、扶養控除が親の所得から控除され、特に19歳以上23歳未満の子どもは「特定扶養親族」として、この扶養控除の金額が増額されます。扶養控除の金額は以下のようになります。この金額が親の所得から差し引かれたうえで税額計算されるため、扶養親族がいることで親の税金がおさえられているというわけです。
扶養控除額(所得税の場合)
| 子どもの区分 | 所得控除額 |
| 一般扶養親族(16歳以上) | 38万円 |
| 特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 |
いずれにせよ、扶養を外れるということは、負担が増えるということです。ただ、もし扶養から外れて、自分で社会保険に加入した場合は、将来の年金が増えたり、病気の際に傷病手当金が受け取れたりというメリットがあります。国民健康保険に加入した場合はこれらのメリットはありません。雇用保険のように、社会保険には学生は適用除外という規定はありません。企業規模の要件はありますが、社会保険の適用拡大は進んでおり、年収106万円が目安となっています。学生であっても社会保険に加入して、病気や将来の備えを厚くするというのも、賢い選択肢の一つです。
国民年金保険料|日本年金機構
No.1180 扶養控除|国税庁
社会保険加入の要件|社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省
親子で考えたい将来とお金のこと
「学生である子どもの国民年金は、学生納付特例を利用して自動的に猶予されている」と考えている方は多いですし、お子様の収入をあまり把握していない親御さんも多いのではないでしょうか。筆者は、大学生にパーソナルファイナンスを教えていますが、講義の中で「自分の国民年金保険料について、①自分が支払っている、②親が支払っている、③学生納付特例を使って猶予されている」かの問いにすぐ回答できる学生は少ないものです。学生の時には実感しづらい将来の年金の大切さを説明できるのは、人生の先輩である親だからこそできることと言えます。アルバイト収入が増えて扶養から外れるのは必ずしも損だというわけではありません。単純に「扶養を外れる=損」と考えるのではなく、長期的な視点で見たときに、メリットもあると判断することも大切なのではないでしょうか。親としては、年末調整の書類提出時や確定申告書作成時に初めて子どもの収入超過に気づき、過去にさかのぼって扶養を外す複雑な手続きに追われるケースも少なくありません。定期的にお子様の収入状況を確認し、親子で社会保険や税金などお金の話をしてみましょう。
- プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)
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社会保険労務士。行政書士。CFP®
一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
http://childmoney.grupo.jp/
一般社団法人かながわFP生活相談センター理事
http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/
J-FLEC認定アドバイザー
https://www.j-flec.go.jp/advisors/
ウーマンライフパートナー会員 Women Life Partner
https://wlp.or.jp/
- オフィシャルWebサイト
- http://tosha.grupo.jp/