子どもは自宅通学?下宿?悩んだ時の家計の管理方法と子どもと話し合う方法とは
子どもの受験校は、通常、子どもの「希望」と「偏差値」のバランスで決定していきますが、受験生みんなが頑張っている状況ですから、成績が伸び悩み、受験校を考え直すこともあるかと思います。そんな中、新しく遠方の学校に進学するという選択肢が増えれば、親にとっては想定外の大きな出費となり、躊躇してしまうかもしれません。今回はそんな選択肢があがったときにも慌てず判断できるようなお金の管理方法、親子で話し合っておくべきことなどをご説明します。
まずは家計の現状把握からはじめよう
受験が終わっても、進学先が決まるまで「自宅通学か」「自宅外通学か」がわからなければ、進学後の費用について見積もることは難しいものです。ただ、わからないからと先送りしてしまうと、進学先が決定したときには、思っていたよりも家計のお金は目減りしてしまいます。そこで、先がわからない中でもできる「現状把握」から始めてみましょう。現状把握の方法としては、まず家計の支出を、固定費・変動費・積立費と分類します。以下のように分類して金額を計算してみましょう。 この分類をするときに、既に受験時期に突入している場合は、注意が必要です。受験時期から進学後までの約2年間は、家庭の資金計画は大きく揺らぎます。塾への費用など突発的な費用も変動費としてかさみますので、それ以外の2つについてちゃんと計算しておきましょう。家計簿をちゃんと付けられなくても、今は「家計簿アプリ」や「レシート貼るだけ家計簿」など、自分が取り組みやすい方法でできる管理方法もあります。まずは、家計の大枠を把握することが大切です。
教育費として支出できるのはどこまでか
支出の分類ができたら、次の段階として、変動費と積立金額に注目してください。子どもの教育費の支出が落ち着いてから老後資金の準備をするというように、積立金額を目的ごとに分けて管理していないご家庭もありますが、子どもの教育費は個人ごとの口座、親の老後資金は親の口座(老後資金とわかるようにiDeCoなどで管理)と目的ごとに分けてください。固定費は、毎月「必ずかかる」ことが決まっていますので、工夫することは難しいですが、それ以外の2つについては工夫が可能です。「この費目を減らすことができるのか」「支出する時期をずらすことができるのか」について個別に検討し、積立金額についても、「一時的に」積立金額を減らして教育費に回すことができるのかを併せて検討しておきましょう。一旦貯蓄を減らすのは心配かもしれませんが、なんとなく貯めていたNISAなど、目的がはっきりしないまま貯蓄している金額があれば、教育費に回せます。家計の中から教育費にどこまでかけることができるのかがわかれば、上限額を見積もることができます。
遠方への進学が現実的になってきたときに子どもと話し合っておきたいこと
遠方の学校しか合格しなかったケースや、合格した中でより自分の希望に合う学校が遠方だったケースなど、遠方の学校への進学が現実味を帯びてくるケースは様々でしょうが、合格後に悩む時間は多くありません。ただ、家計の管理をしておくと、「ここまでなら支出しても大丈夫」という目安金額が計算できているはずですので、住居を決めるまでの宿泊費用などの滞在費や家具の購入費など、新生活準備に充てられる費用がわかってきていると思います。親元を離れることとなりバタバタとしているときでも必ずやっていただきたいのは、「子どもが自分で管理できる口座」を子どもに渡すことです。親の財布からなんでも出してしまうと、子どもにはお金の実感がわきづらくなります。もし、教育費が不足して奨学金を借りることになったとき、お金は子どもの口座に入金されます。知らない土地での不動産の物件探しなどを考えると、なかなか希望通りにいかず予算が膨らむこともあるでしょう。本来の予算はここまでと決めていても、超えた時には、「超えた分はその後の生活費で調整すること。親が支援できるのはここまで」と、あらかじめ話しておきましょう。その際、予算を「超えたから親が負担する」「超えたから教育ローンや奨学金に頼る」などが当然だ、と思わせないことが重要です。代わりに、「今回の予算はこれくらいだから、この範囲内で工夫する癖をつけるようにしよう」とアドバイスしておきましょう。
大学生の生活費を自宅からの通学生と自宅外からの通学生ごとに計算した目安が、令和4年度学生生活調査結果(出所:日本学生生活支援機構)から公表されています。自宅通学生は1,642,700円、自宅外通学生は2,124,000円が平均値です。同調査によると、自宅通学生が私立大学に進学したときには、1,731,800円、自宅外通学生が国立大学に進学したときは1,681,800円と、個別に比較すると、ほとんど変わらない計算となります。お金の比較は親のためのものかもしれませんが、「うちはお金が無い」だけで済まさず、子どもにもちゃんとした数字を出しつつ説明しておきたいものです。
- プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)
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社会保険労務士。行政書士。CFP®
一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
http://childmoney.grupo.jp/
一般社団法人かながわFP生活相談センター理事
http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/
J-FLEC認定アドバイザー
https://www.j-flec.go.jp/advisors/
ウーマンライフパートナー会員 Women Life Partner
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