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進学NEWS
2025.10.01

大学生のお金の管理。将来奨学金を返済するために親が子どもに言っておくべきポイントとは。

奨学金を受け取っても収入とは考えない!

「奨学金は借金です」と、私たち専門家が言ったとしても、奨学金を借りる目的が「教育費」のためだからか、奨学金を借りるという行為に対して悪い印象を持つ方は少ないでしょう。ただ、繰り返しますが、奨学金=借金であり、お金を受け取ってもそれは収入ではありません。子どもの大学進学後の学生生活を賄う費用を、「親からの支援」と「学生本人のアルバイト代」、「奨学金」の三本柱で考えている方は特に混同しやすいかもしれませんが、奨学金を収入と考えないように、子どもには伝えておきたいものです。特に、日本学生支援機構の奨学金のうち、利息のある第二種奨学金を借りている方は、学生の間は無利子ですが、貸与終了後の翌月1日から利子が発生します。早めに返済し、返済利子が少なくなるという仕組みは、まさしく「借金」です。借金ということは、より「早めに返すことで総返済額が少なくなる」ので、早めに返すことが借金返済の近道といえます。

ついうっかりの延滞でもブラックリスト入りは免れない

受験時に、親子で学力の進捗状況についての話はよくするかもしれませんが、お金の話まではなかなかできないこともあるかと思います。大学時に奨学金を借りることを話し合っていたとしても、卒業後に返せばいいからと、親子で確認するのは「月に借りる金額」だけということもあるでしょう。本来なら、借りるときには、「月に借りる金額」だけではなく、「計画的に返済する」ことも学生本人に理解させておくべきです。卒業後に定職に就き、定期的な給与収入から計画的に返済できていればいいですが、長い人生、病気になったり、失業したり、もしくは誰かの扶養家族になることもあるでしょう。そんな経済的に困窮しているときに、うっかり返還期日を過ぎてしまうと大変です。延滞金が年3%の割合で、延滞している日数に応じて加算されますし、さらに延滞3か月以上になった場合、個人信用情報機関に個人情報が登録される、いわゆる「ブラックリスト入り」となります。このブラックリスト入りにより、新しくクレジットカードを作ることや、住宅ローンを借りるときに不利になることがあります。本人にとっては「うっかり」だったり、誰かに相談しにくかったりという事情があるかもしれませんが、借金にそんな言い訳は通用しません。親やきょうだいなど身近な親族に保証人になってもらうこともあるでしょう。しかし、返済が滞ることでその人からの信用も失いかねません。

ついうっかりにならないように知っておきたい救済制度

第一種奨学金奨学金(無利子)の返還が困難になったときには、①最低返還月額2,000円の返還(初年度のみ)もしくは②返還期限猶予、第二種奨学金(有利子)の返還が困難になったときには、①返還月額を減額して返還、もしくは②返還期限の先送りという救済制度があります。場合によっては、収入・所得金額の基準があり、審査されます。では、どの方法がいいのかということですが、まず、無利子の第一種か有利子の第二種かで救済制度がそれぞれ異なります。先送りにしたほうが「楽になる」と思う方もいるかもしれません。ただ、今の楽は将来の楽ではありませんし、借金が減ることはありません。取れる選択肢は本人の健康状態や収入など個別の環境によって異なりますが、最悪のケースにならないように、周囲に相談して使える制度が無いか調べたり、電話で奨学金相談センターに問い合わせたりすることもできます。解決策を誰かに相談することは決して恥ずかしいことではないのです。


日本学生支援機構「令和7年度版「返還のてびき」(詳細版)」P17、P27

高等教育の修学支援制度には学業要件がある

奨学金といっても、第一種と第二種、大学独自の奨学金、もしくは高等教育の修学支援制度を利用するなど、様々なケースがあるでしょうが、高等教育の修学支援制度の「学業要件」についても触れておきます。 以下は、文部科学省からの抜粋(出所:文部科学省https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/)です。

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このような修学支援は、「返さなくてもいい」という支援もありますが、利用できるからと言ってよく調べずに受けてしまうと途中で支援を打ち切られてしまうこともあります。支援を受け続けるには条件があるのです。たとえば、出席率も要件の一つです。令和7年10月から19歳以上23歳未満の扶養条件が130万円から150万円に改正(出所:日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2025/202508/0819.html)されることで、扶養範囲内で働ける時間が増えます。アルバイトのし過ぎで、講義への出席ができずに成績が下がったりすると、本末転倒です。いずれにせよ、子どもが自分自身で、どんな奨学金や支援制度を受けているのか、「返すのか」「返さないのか」、「支援を受け続けるための条件」など詳細の条件について確認し、しっかりと理解することが大切なのです。

[當舎 緑]
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プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP®

一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。

子どもにかけるお金を考える会メンバー

http://childmoney.grupo.jp/

一般社団法人かながわFP生活相談センター理事

http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/

J-FLEC認定アドバイザー

https://www.j-flec.go.jp/advisors/

ウーマンライフパートナー会員  Women Life Partner

https://wlp.or.jp/

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