今足りない分に気づいたら?教育費の準備方法
夏休みが終わったあと、受験生がいるご家庭では、希望する大学は変更しないでこのままいくのか、希望校を変更するのか、滑り止め校を増やすのかなど、それぞれの方針を定めて、冬休みや直前対策講座の塾代を支払った頃でしょう。
2024年の春入学の大学受験に向けて、頑張る子どもを見守ることしかできないと思っている保護者も多いかもしれませんが、子どものためにできることがあります。それは教育費の準備です。今、保護者がすべき教育費の準備方法をお話ししましょう。
まだ気づいてない「不足の事態」もあり得ることに注意!
高校で補講や特別講座があり、大学受験に備えてくれたとしても、塾や予備校に全く通わないで受験することは、今の時代なかなかないことでしょう。おおよその受験情報は通塾先で得られることも多いとはいえ、親の時代とは全く違う受験制度にとまどわれ、まだ受験自体にいくらかかるのか、不足するかどうかも気づいていないこともあります。塾自体も、勉強方法と進学パターンは教えられるものの、受験料について詳細を言及することはあまりありません。
そのため、今保護者ができるのは、教育費の準備がいくらぐらい必要なのか、子どもの受験方針とのすりあわせです。子どもができるのは受験勉強だけですが、どの大学を何校受けるか、大学にこだわるのか学部にこだわるのか、もし希望がかなわなかった場合(惜しかった場合)浪人してでも再受験したいのか、など子どもと詳細を詰めておかないと、直前にお金が不足することもあります。不足に「直前に」気づくより、「今」不足するかもと考えて行動を始めておきましょう。
入学費用は、「入学までにかかる費用」のこと
希望大学に入学した時にかかる費用である入学金、在学費用はあらかじめ調べておくこともあるでしょうが、「入学するまでにかかる費用」は見落としがちです。この不足しがちな費用について、いくらかかるのかイメージするために、まず日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査(2021年12月20日発表)をご紹介します。
この調査によると、国公立・私立別に見た大学の入学費用は、国公立大学は67.2万円、私立大学文系は81.8万円、私立大学理系は88.8万円かかるようです。この金額に含まれるのは、「受験費用」と「学校納付金」、「入学しなかった学校への納付金」です。つぎに在学費用は、国公立大学で103.5万円、私立大学文系で152.0万円、私立大学理系で183.2万円ですので、受験時から入学初年度までの金額がかなり保護者にとって負担となることがわかるでしょう。
あらかじめ、在学中の高校を通じて、「奨学金の予約採用を申し込んでいるから大丈夫。」と思っている方もいるかもしれませんが、奨学金は、入学後に支給されるものです。しかも給付型という「返還しなくてもいい」奨学金に申し込んでいたとしても、必ずしも採用されるとは限りません。
急に準備不足を感じたときには合格前でも融資を受けられる教育ローンという選択もありますが、教育ローンでも貸与型奨学金でも、「借金」であることは変わりません。特に、教育ローンの場合、利用する金融機関によって金利がさまざまです。また、奨学金は卒業後に返済が始まりますが、教育ローンは、借りて一安心となったとしてもすぐに親が返済する必要があるのです。
まだ受験までは時間があります。受験は「子どもに任せている」「子どもはしっかりしている」と言わず、お金の計算はしっかりと保護者がしてあげましょう。特に、受験料は高くなりがちです。子どもからすると、大学名にこだわって複数学部を受験すると気軽に親に言うこともあるでしょうが、受験学部が増えるごとに受験料は積み重なります。受験方針と受験料のすり合わせはとても大切です。
教育資金は普段利用している家計から分離すべし!
不足しているかどうかを確認するために日本政策金融公庫の調査結果をご紹介しましたが、子どもとすり合わせをして、それでも、不足するかどうかわからないという方への家計管理方法をご紹介します。
とりあえず、子どもにかかる費用の口座は普段家計として利用している口座から分けて、教育費として準備できる資金のすべてを隔離しておきましょう。そこに子ども一人あたりに使える金額を移してみましょう。受験までにかかる費用は、塾代含めて抑えることが難しいなら、明らかに「減っている」ということがすぐにわかる仕組みとするのです。
学校経由で奨学金の申し込みをしたという方でも、そこで終わりにせず、さらに利用できる制度をさがしておくのもいいでしょう。不足した時に一番いいのは、日本学生支援機構の給付型の奨学金に採用されることですが、不足がさらに増えることも想定して、それ以外の選択肢を今こそ親が探しておくのです。たとえば、理系の女子を選ぶ女性を応援する公益財団の奨学金や居住地や学校の所在地や出身地で検索できる自治体の奨学金や大学独自の奨学金も調べてみてください。今の時点で不足するのであれば、入学後はもっと苦しくなることもありますから、卒業までを考えて独自の奨学金制度を持つ大学受験を子どもに提案してみるのもいいでしょう。
なし崩し的に家計から教育費を支出するのでなく、口座管理を徹底して計画的に教育費を準備できるのは親だからこそです。
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- プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)
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社会保険労務士。行政書士。CFP®
一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
http://childmoney.grupo.jp/
一般社団法人かながわFP生活相談センター理事
http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/
- オフィシャルWebサイト
- http://tosha.grupo.jp/