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進学NEWS
2023.11.01

ライフプランと奨学金
奨学金を返しながらの生活にはどんなリスクがあるの?

貸付金利のリスク
将来の返還を考え、特に「有利子奨学金」の利用は必要最低額に

 (独)日本学生支援機構の貸与奨学金には、無利子で借りることができる「第一種」と有利子の「第二種」があります。令和3年度に43万3,000人以上が利用している無利子の第一種奨学金は、元金のみを返済します。一方、68万5,000人以上が利用する有利子の第二種奨学金は貸与の終了(卒業)時期に決定する利率を上乗せして返していくことになります。

 奨学金が借金である以上、返済には利率が大きく影響します。利率は経済状況で変化するほか、第二種奨学金の申込時には、利率が一定の「利率固定方式」または利率が変動する「利率見直し方式」のいずれか一方を選ぶことになっています(一定時期まで変更可)。

 「利率固定方式」は返還終了まで適用される利率が変わりませんが、「利率見直し方式」では、貸与終了時に決定した利率がおおむね5年ごとに見直され、市場金利の変動に左右されます。ちなみに、奨学金の貸与を終了した人への令和5年度8月の基本月額に対する貸与利率は、利率固定方式0.905%、利率見直し方式は、0.3%となっています。

有利子の奨学金は、利率が高いほど、金額が大きいほど、期間が長いほど返還総額は膨らみます。「奨学金は必要最低額にとどめる」というのは、特に有利子奨学金において、将来の返済額が増えないようにするために、とても重要なことです。

可処分所得のリスク
新たなステップのために、可能なら繰上返還を

 奨学金を借りると、卒業後半年から返還が始まります。例えば200万円の奨学金を借りた人が社会人になり、自分の収入から月々2万円ずつ返還すると、8年以上かかります。一方、奨学金等を一切借りていない人が同じペースで貯蓄をすると、同じ期間で200万円が貯められます。大学等を卒業して30歳ぐらいでまとまった資金があれば、家族を持つための準備費用や資格取得費用などに使え、新たなステップへ進みやすくなるでしょう。

 奨学金を返還していくことは、ゼロからの出発ではなく、マイナスからの出発になります。収入が同じなら奨学金を利用していない人よりも2倍の時間がかかるかもしれないことを意識して、繰り上げ返還が可能なら早めに返すことも考えておきましょう。

信用リスク
お金を借りることのメリット・デメリットを理解し、万が一の時は早めに相談する

 奨学金を借りるタイミングの多くは大学等への進学時なので、当然ながら借りる本人には社会経験が少なく、将来を見通すことは難しい状況です。しかし、大人として自分の信用を守る努力は必要です。奨学金の返還は借金返済と同じと考え、災害や失業などで仮に支払いが厳しくなりそうな場合は、早めに相談をしましょう。(独)日本学生支援機構の奨学金は、条件に当てはまれば「返還期限の猶予」や「減額返還制度」が使える場合があります。

 また、学生の間は保護者から援助を受けていても、社会人になれば通信費やクレジットカードでの買い物などは自分で支払うことになるはずです。スマートフォンなどの端末の割賦代金を通信料金と一緒に払っている場合やクレジットカードの利用は、支払いができないと信用を失い、通信会社やクレジットカード会社から一括で返済を求められる可能性もあります。

 将来マイカーやマイホームなどのローンが組めないということにならないよう、利用する前に奨学金のメリット・デメリットを家族でしっかり共有しましょう。



独立行政法人 日本学生支援機構 奨学金
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/index.html
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[中上 直子]
プロフィール : 中上 直子(なかじょう なおこ)

ファイナンシャル・プランナー、消費生活コンサルタント。
出版社勤務、フリーライターを経て、啓発・相談業務を行う。マネー、教育、消費生活をテーマに編集・執筆、講座企画・講師、講師養成などに携わる。新聞、雑誌、Webサイトなどに執筆多数。
共著に「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)。子どもにかけるお金を考える会メンバー。日本消費者教育学会会員。一般社団法人消費生活総合サポートセンター理事。

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