どうする? 高校卒業後の想定外の教育費
■想定外の浪人でかかる予備校の費用
保護者が子どもの教育費を考えるとき、大学や専門学校へは現役合格することを前提として金額を見積もるのが一般的です。学校を選ばなければ希望者全員が進学できる大学全入時代なので、現役で進学すると考えるのはもっともなことです。
ただ、保護者が高校を卒業した頃よりも浪人生の割合は減っているものの、今も浪人を選ぶ生徒は存在します。わが子が浪人しない保証はありません。
浪人生が予備校へ通うとしたら、その費用が生じます。
予備校の費用は、学校や選択するコース、授業数で異なりますが、1年間で100~200万円程度はかかると言われています(医歯系等除く)。通学定期券が適用されないこともありますし、受験料もあらためてかかりますから、浪人することで増える教育関連費をその年の収入でカバーするのは難しい家庭も少なくないはずです。
高校卒業までに大学・専門学校の教育費を貯め終えている場合、予備校費は、その準備済みの預貯金から借りるといいでしょう。借りた分は穴埋めできるよう、予備校入学時から、あらためて預貯金するようにします。浪人が1年間なら、予備校入学から大学4年生の学費支払時期まで4年間ありますから、その期間で借りたお金を預貯金へ返済すればいいのです。
借りたのが100万円だとしたら、毎月の預貯金額は次のようになります。
100万円÷(4年×12か月)
=100万円÷48か月
≒2万1,000円
この金額だけを見ると何とかなると思えるかもしれませんね。でも、大学・専門学校の学費を高校卒業までに準備しきれていない場合は、大学・専門学校入学後も学費を貯め続けているはずなので、借りた分の補てんがプラスαされることによって、負担は重いかもしれません。
■想定外の留学を子どもが希望
大学・専門学校生の海外留学人数は、コロナ前までは右肩上がりで増えていました。「日本人学生留学状況調査(独立行政法人日本学生支援機構)」が公表されるようになった2004年度には、同調査1万8,570人だった日本人の海外留学生は、2018年度に11万5,146人となっています。
これらの数字は、在学している大学等が把握している人数です。したがって、学校が把握していない留学も加えると、留学人数はもっと多くなると思われます。
ただ、人数は増えていますが、高等教育の学生全体から見ると、留学する人の割合は3.134%にすぎません(日本人学生留学状況調査2018年度)。「みんな」が留学していると言える状況ではないのですが、「若者は、海外の大学を目指すべき」と考える人が40.9%とする調査結果(「全国47都道府県大調査2023」メットライフ生命)もあることから、今後の留学希望者は増える可能性が見えてきます。
保護者としては、留学も教育資金の準備プランに入れたいところですが、留学費用は留学先の国や学校によって予備校以上に異なるため、目標額の設定は悩ましいものです。現実的な目安は「期間」がヒントになるでしょう。
留学する学生数が一番多かった2018年度では、留学期間1か月未満の短期留学が全体の66%を占めています。1年以上の長期留学は2%に過ぎませんでした。
いかがでしょう? 1か月間くらいの短期留学であれば、想定外であっても費用の捻出は可能ではないでしょうか。子ども自身が少し頑張れば、アルバイトで海外留学費用を貯めることもできそうです。
■想定外の支出を補う方法
想定外の支出は他にもあります。入学前に気づかなかったノートパソコンや教科書代、授業や実習の都合で学校近くでの一人暮らしをせざるを得なくなったりした場合の居住費などです。帰宅が遅くなると自宅までのバスが無いため、通学用の自動車を購入したという話もありました。
支出の不足分を補うには、貯蓄の取り崩しや、祖父母からの援助、奨学金や教育ローンの利用が考えられます。
資金を用立てる場合、利用の順番は次のとおりです。
1.もらう
2.借りる(利息無し)
3.借りる(利息あり、利率が低いもの)
4.借りる(利息あり、利率が高いもの)
「1.もらう」は祖父母からの援助や給付奨学金になります。奨学金は国の「高等教育の修学支援新制度」や進学先の独自の制度から、子どもの成績や家庭の経済状況などの条件が合うものを探します。
「2~4.借りる」は貸与奨学金と教育ローンになります。
奨学金は日本学生支援機構や住んでいる自治体や学校独自の制度から利用できるものを探し、利率の低いものから順に利用するようにします。
教育ローンは、日本政策金融公庫が取り扱う「国の教育ローン」をはじめ、住まいや勤務先を営業範囲とする金融機関の教育ローン、勤務先の福利厚生制度の教育貸付などから、利率の低いものを選ぶようにします。利率の低くなるキャンペーン期間を利用するとよいでしょう。
留学の場合は、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」の奨学金に給付と貸与があります。
■借り入れは、親子のライフプランを親子で考えてから
子どもが本気で浪人や留学を希望しているのなら、本人の将来の収入を担保に貸すという提案をしてみてもいいでしょう。高校卒業以降の教育費は高額なので、入学までに子ども自身が準備することは不可能ですが、親にとっても簡単ではなく、親の実力以上の支出になるようなら、家計が破綻してしまわないか要注意だからです。
不足する金額を借りる場合は、必ず親と子どもそれぞれのライフプランを見通し、将来見込める収入と、想定される支出を一覧表にしてください。借りたものを本当に返せそうなのか見極めることが大切です。
「日本人学生留学状況調査(独立行政法人日本学生支援機構)」
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/nippon/index.html
「全国 47 都道府県大調査2023(メットライフ生命)」
https://www.metlife.co.jp/about/press/
「奨学金(独立行政法人日本学生支援機構)」
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/
「トビタテ!留学JAPAN」
https://tobitate-mext.jasso.go.jp/
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会