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進学NEWS
2023.07.01

貸与型奨学金の返還は42歳まで続くってホント? ライフプランを考えて!

■奨学金の毎月の割賦金支払い後、生活費は足りる?

奨学金の返還は、卒業(正確には貸与終了)から半年後の10月から始まります。卒業直後の4月に就職したとすると、家計のやりくりを練習できる期間が6か月はあるということになります。毎月の割賦金を支払っても生活は成り立つでしょうか。

返還額の例を2つ見てみましょう。


<例1>
日本学生支援機構で無利子の第一種奨学金を毎月3万円借りると、4年間の借入総額は144万円(=3万円×12か月×4年間)です。毎月均等に払う月賦返還の場合、毎月の返還額は9,230(最終回は9,350)円になります。


大学の新規学卒者の所定内給与(いわゆる初任給とは異なり、残業代等を除いたもの)は22万8,500円(令和4年賃金構造基本統計調査/厚生労働省)です。


所定内給与の額から所得税などを差し引くと手取り分は少なくなり、およそ19万円です(社会保険料の本人負担割合を14.75%と仮定)。2年目以降は住民税が引かれますから、さらに少なくなります。


この19万円から約1万円の返還をした18万円で暮らしが成り立ち、かつ、将来への貯蓄もできるのであれば、月額3万円の奨学金を借りることは問題ないと言えるでしょう。


<例2>
では、有利子の第二種奨学金を毎月8万円借りるとどうなるでしょうか。貸与総額は384万円(=8万円×12か月×4年間)、毎月の返還額は約17,500円です。


手取り19万円から17,500円を引いたら、約18万2,500円。生活費、飲食費、趣味、レジャー、衣類など、自分のライフスタイルに合わせて予算を立ててみましょう。


ただ、例1に比べると使えるお金が8,000円少なくなっています。一人暮らしをして家賃などの固定費などが高めの場合、貯蓄ができないおそれもあります。


■返還期間、忘れてない?

前述の例1、例2は「毎月の返還額」についての計算でした。子どもの将来を考えるとき、毎月の返還額に加えて気にかけなくてはならないのが奨学金の「返還期間」です。


例1の返還期間は13年間、例2は20年間です。つまり、例1は子どもの年齢35~36歳で返還が終わりますが、例2は42~43歳まで続くのです。


子どものライフプランを考えるとき、住宅を購入してローンを組んだり、子ども(子どもの子ども)の教育費を多く負担したり貯蓄に励む時期はいつでしょうか。もちろん個人差はあるので一概には決めつけられませんが、晩婚・晩産の現在、40代が人生の中で経済的な荷物が一番多い時期かもしれません。その時期まで奨学金の返還が続くと、使えるお金は返還分少なくなることになります。


奨学金の返還は、毎月の返還額と返還期間の両方に気を配る必要があるのです。


■奨学金は、良い借金だから問題ない?

奨学金の返還が続いている=借金を抱えている、ということです。自動車を月賦で購入しようとしたり、住宅ローンを組もうとしても、自分が本来借りられるはずの金額から、奨学金の残債分が差し引かれます。


奨学金の返還は、繰上返還をするなど、当初の予定よりも早い返還を目指す努力も必要になります。そのためには、社会に出てすぐに貯蓄するクセをつけ、少し溜まったら借金の返還を行うことです。


奨学金は、確かに借金ではあるのだけれど、ギャンブルなどで作った借金とは違って「良い」借金なのだから、問題はないと考える人に出会うことがあります。


言いたいことは、心情的にはよくわかります。学歴の高い方が生涯賃金は高めですし、職業の選択肢も増えると言われています。借金してでも学ぶことに意義はあるはずです。


けれど、借金に良いも悪いもありません。抱えている借金があれば、預貯金より優先して返す必要があります。


■42~43歳の子どもの姿、想像できてる?

私が高校生や保護者向けに行う奨学金セミナーで、よく、次の話をします。


「好きな人ができて大学卒業の1年後に結婚、その1年後に子どもが生まれたとします。返還期間20年間の奨学金を抱えるのは、その生まれた子どもが大学に入る18歳まで返還が続くと言うことです。預貯金よりも借金の返済の方が優先なので、生まれた子どものための大学進学資金の預貯金が難しく、子どもも奨学金頼みの進学になるかもしれません・・・」


決して脅しているわけではありません。給付型奨学金もありますし、大学や専門学校側・国もいろいろな施策を用意しています。貸与型奨学金だけで大学や専門学校の費用をまかなわなくてもよくなる時代がきっと来るとは思います。


それでも今、貸与型奨学金を頼らざるを得ないのであれば、完全に頼るのではなく、未来の子どもの生き方をしっかり想像し、見通してみて、本当に足りない分だけを上手に使うようにしてください。

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#ファイナンシャルプランナー , #奨学金返済 , #菅原直子
[菅原 直子]
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プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント

会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。

■著書

共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)

『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)


■所属団体

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

子どもにかけるお金を考える会

働けない子どものお金を考える会

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