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進学NEWS
2023.06.01

学費以外の費用。大学生の費用はいくらかかる?

2023年5月、新型コロナウィルス感染症の位置づけが2類相当から5類に変更されましたが、マスクも原則自由となり、今後は学生の行動も広がっていくことが予想できます。行動が広がれば、これまでのオンライン講義やサークル活動の自粛などの規制が無くなれば、交通費や食費はもちろん、学費以外の費用がかさむことでしょう。今回は2023年3月に公開された、全国大学生協連の「第58回学生生活実態調査」から、学生のお金事情について考えていきます。

アフターコロナ。学生生活にかかる費用が増加しても貯蓄は忘れずに!

この調査は2022年秋に実施されたものですので、コロナの影響はまだ残っていますが、学生生活にかかる費用の参考にはなるでしょう。

まず調査結果の中で興味深いのは、日常生活で気にかかることは「友達ができない・対人関係がうまくいかないこと」が減少し、「生活費やお金のこと」が増加していること。悩みごとや困りごとを「相談しやすい相手」は、コロナ禍前と比べて「親の増加が目立つ」とも書かれています。また、大学生活の重点は「部活動・サークル・同好会」が減少し、「趣味」が増加しているのも興味深い特徴といえるでしょう。

具体的な金額にも触れておきます。収入については、自宅生の「収入合計」は64,350円で、そのうち「アルバイト」が39,860円で、残りは「奨学金」と家庭からもらう「小遣い」などです。一方、「支出合計」は63,580円です。費目別では「教養娯楽費」が13,410円、「交通費」が9,340円、「食費」11,390円。「貯金・繰越金」16,950円は前年の調査より1,900円減少していました。行動制約緩和に伴う費用が増加し、「貯金・繰越金」が減少するという傾向は今後も続きそうです。

足りないなら「借りればいい」と奨学金をあてにして貯蓄を怠っている方もいますが、奨学金には、返済不要の「給付型」と返済が必要な「貸与型」があり、貸与型を受給している学生のうち71.6%と多くの学生が返還に不安を感じているということは覚えておきましょう。

大学生の特別支出として考えておきたいものとは

今後、毎月かかる食費や交通費など以外の突発的な支出も多くなりますので、予定を把握しておきましょう。学生の間、特別にかかる支出の項目としては、
①サークルなどの合宿代や推しのコンサート代などの娯楽費用
②国内旅行や海外旅行代、留学費用
③運転免許や各種スクール費用
④就職活動にかかる費用
などでしょうか。②の留学費用などについては、あとで説明しますので、それ以外の費用について目安を考えておきます。④の就活については、コロナ禍前よりもオンラインが進んだことで、費用は抑えられてきています。その他の傾向として、③資格取得のための各種スクールは難易度の高い資格だけでなく、幅広い資格取得にも費用をかけたり、オンラインでの購買や美容、エステなど、かけたいものに費用をかけているようです。
このように、特別にかかる支出のうち、①の娯楽費用のような本人がかけたいものにかけている費用は、アルバイトなど、本人の収入次第として構わないでしょうが、資格取得や運転免許など、まとまった費用については、本人に一旦貸して、卒業後に返済してもらうなど、親子間で「いつ」「いくら」準備しておけばいいのか、「卒業後」「いつから」「いくら」返していくのかを話し合っておくのもいいでしょう。

留学も視野に入れて学生生活を考えよう

海外の高等教育機関(大学、大学院)に単位を伴う長期留学をする日本人の数は2004年をピークにして、2019年まで減少傾向の中、コロナ禍の影響で、以降もさらに減少しています(出典:文部科学省 https://tobitate.mext.go.jp/about/case/)。
留学なんてお金がかかることをさせられないと思っていても、今後は進路のために留学をしたほうがいいというケースも出てくるかもしれません。大学生の留学に必要な費用を考える前に、どれだけの期間、たとえば
①短期留学(1週間~数週間程度、もしくは春休みや夏休みなど長期休暇を生かした期間)
②長期留学(大学休学もしくは交換留学など)
③大学進学(海外の大学に進学)
を決めるといいでしょう。

かかる費用として考えられるのは、渡航費、ビザなどの手続費用、学費、滞在費、食費、お小遣いなどでしょう。これだけの費用を親が全部出すというのは大変です。使える制度は、しっかりと調べておきましょう。

例えば、日本学生支援機構のHPでは留学のための支援が掲載されています。ここには、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」など、返済不要の奨学金や事前事後研修など、意欲があればチャレンジできる制度も掲載されています。ただ、募集枠の条件、例えば在籍校を通じて申し込みをしたり、海外の大学の単位が日本の大学の単位にならなかったりと、しっかりと自分が希望する条件かどうかを確認しておく必要はあります。


少子高齢化の止まらない日本では、学校を卒業したあと、資格や語学は強力な武器となります。参考に挙げた調査では「生活費やお金」について「親に相談する」ことが多くなっているという結果も出ています。懐事情が厳しい中でも、ぜひお金をかけてでも「学ぶこと」の後押しをしていただきたいと思います。

[當舎 緑]
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プロフィール : 當舎 緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP®

一男二女の母。阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。得意テーマは、教育資金の準備方法、社会保険の仕組み、エンディングノートの作り方、これから始めるやさしい終活、成年後見の活用方法、銀行を介さない家族信託の仕組みなど。著書は、『3級FP過去問題集』(金融ブックス)『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)など。

子どもにかけるお金を考える会メンバー

http://childmoney.grupo.jp/

一般社団法人かながわFP生活相談センター理事

http://kanagawafpsoudan.jimdo.com/

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