浪人はアリ?ナシ? 早めに考えておきたい「受験の出口」とお金のこと
■浪人は1割前後?
国の統計「学校基本調査(令和4年度)」によると、高校生の進学率は、大学約59%(通信を除く)、専門学校(専修学校専門課程)約17%、専門学校(専修学校一般課程)約4%となっています。実に8割の高校生が進学していることになりますが、専修学校一般課程の一部に予備校が含まれており、無認可の予備校や私塾を含めると、計算上は高校卒業時点で最大約8%が浪人の可能性あり とみることができます。
一方、同じ調査の中に、大学に入学した年齢を調べたものがあり、18歳での入学は約81%、19歳は約15%、20歳は約2%となっています。現役での入学は8割で、1浪が15%と読み解くこともできるでしょう。
保護者の時代より浪人する生徒は減っているとはいえ、現在も実際に浪人するケースはあることが統計からもわかります。わが子が現役で志望校に合格できなかったらどうするのか、資金面から考えてみましょう。
■予備校費は準備していないことが多い
子どもの教育費は、子どもの進路によって差があります。進路別の教育費は、いくつかの統計を組み合わせることで、幼稚園から大学や専門学校までの合計額を知ることができます。文部科学省が定期的に発表する「子供の学習費調査」や「私立大学等の○○年度入学者に係る学生納付金等調査結果」などが該当します。
教育費のうち、高校までの教育費は保護者の毎月の給料から支払いますが、これらを払いつつ、同時に大学や専門学校の費用を子どもが小さいうちからコツコツと積み立ててきたはずです。大学や専門学校の費用に月額制の支払い方法はほぼなく、1年分を1回または2回で支払うことが多いため、あらかじめ準備する必要があるからです。
教育資金の積み立て計画には貯めるべき金額の設定が必要です。わが子の進路を考えたとき、保護者の希望は資金面からは国立大学だとしても、入学定員などを考慮して、学生の在籍割合が一番多い私立文系大学の平均的な金額を目安とすることが少なくありません。準備できる金額は多いほど安心ですが、限られた収入の中で教育資金に割りふることのできる金額には限界があるため、現実的な選択として私立文系なら妥当なゴールだろうと判断するのです。
このとき、高校卒業の翌年には、大学へ進学するものとして計画を立てることが一般的です。つまり、浪人して予備校に通う費用は最初から計画に入れていないのです。
■教育費は保護者の老後生活資金と一緒に考える
浪人を検討する場合は、予備校の費用とその後の大学・専門学校の費用を誰がどのように負担するのか、教育資金計画を見直しましょう。
保護者が浪人時代の費用をすべて負担するとなると、預貯金にゆとりがない場合、その負担分は保護者の老後生活費を前借りすることに他なりません。保護者のライフプランを見通して、浪人が1年なら大丈夫とか、大学の費用だけでギリギリだから浪人を経済的に応援するのは難しいなどの見極めをします。
浪人時代の費用を負担するのは難しいとわかったら、他の学校や就職など、他の進路も検討するはずですが、それでも子どもが浪人を希望したらどうするのか──。FPとしては、子どもを応援したい気持ちをいったん脇に置いて、親子で資金面を中心とした話し合いをしっかりしてほしいと思います。
■貸与奨学金の利用は子どものライフプランを親子で考えてから
子どもが高校を卒業した段階で保護者が老後に入るまでの期間が長ければ、毎月の預貯金額を少し増やすだけで予備校費として前借りする老後資金の穴埋めが十分可能かもしれません。
でも、すでに保護者が定年退職していたり、定年が近くて老後資金の穴埋めをできそうもなければ、子ども自身に奨学金の利用を検討してもらいましょう。進学は、かかる費用を無視して行えるものではありません。保護者が出せない以上、子どもが費用を用意するしかないのです。
ただ、安易な貸与型奨学金の利用はおすすめできません。必ず、子どものライフプランを立て、借りる奨学金の返還期間や毎月の返還額を家計に落とし込んで将来を見通してみます。子どもが奨学金返還というマイナスの財産を背負って社会に出たら、子どもの家計は成立するのかどうか、親子で一緒に計算してみてください。
浪人が1年で済むという保証はありません。1年後も桜が散ったらどうするのかまでも含めて資金面を厳しくチェックします。
高校卒業後、8割の生徒が進学するのですから、子どもの周りを見渡せば「みんな」が進学している印象です。だからこそ、大卒・専門学校卒の学歴の重みは保護者の時代よりも減っている可能性があります。浪人という教育費の増額を受け入れてまで進学を目指すのかどうか、冷静に判断できるであろう受験前にしっかり決めておくようにするといいでしょう。
学校基本調査「卒業後の状況調査」高校 進学率
(過年度卒を含まない進学率は次のページのエクセルに載っています)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032264966
学校基本調査「大学 年齢別入学者数」
(次のページのエクセルに載っています)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032265031
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会