今準備している教育資金では足りないかも!? と思ったら すぐに始めたい3つの手立てと注意点
現在の教育費負担額を「支払い能力」として見積もる
「教育資金の目標額は400~500万円×子どもの数」と聞くと、途方もない金額に感じてしまう方も少なくないでしょう。希望する進路にもよりますが、この目標額は、進学先の修業年限中(大学は4年)に支払う総額を意味しています。
日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査」によると、子ども1人当たりの教育費用は、大学1年次231万円、2年次から4年次までは年間約150万円という結果でした。
進学時までに全額を準備できれば理想ですが、すぐに必要なのは1年次の費用です。1年次は入学金や諸会費、自宅外から通学する場合はその準備などで、他の学年よりも高額になる傾向があります。少なくともこの200万円を大学等への進学までに準備しておきたいところです。用意できる金額を今一度確認しましょう。
準備した教育資金以外にも、高校までの教育費は保護者が月々の家計のやりくりで捻出しています。高校の授業料は実質無償化されても、その他の納付金、行事にかかるお金、塾代、部活費などは、保護者の負担であることに変わりはありません。そこで、現在、負担している分を「教育費の支払い能力」として見積もると、大学等へ進学後の年間不足額は以下で計算できます。
大学等の年間教育費 ― 高校の年間教育費 = 1年間の不足額
仮に200万円の積立があり、高校生の子どもにかかる教育費が月2万円(年間24万円)の場合、上記調査の数字をあてはめると、大学1年次の教育費231万円 - 積立200万円 - 現在の年間教育費負担額24万円=7万円で、積立を全額使えば、ほぼカバーできる計算になります。もちろん進学先によって学費は異なるので、大幅に足りない場合もあり得ます。
それでも月々負担している教育費を「見える化」することで、「大学へ進学した場合でも4年間でおよそ100万円は家計から出せる」などの具体的な現状把握ができるのです。
進路や志望校にかかる費用を精査する
①受験費用
推薦入試などで1校のみの受験の場合は少なくてすみます。一般入試は複数校を併願するので、受験料や交通・宿泊費が受験回数分必要です。本命校の結果が出る前に入学権利を確保するため、合格校へ入学金を支払う場合もあります。
②入学・在学費用
推薦入学の場合は、高校の推薦枠や成績などで決まるため、希望する大学等であっても学部やコースは第一希望ではないこともあり準備していた費用では収まらない場合があります。私立の場合は、学部やコースで学費が異なるため、進学先の学費は早めに必ず確認しましょう。
③ 自宅外通学の費用
特定の資格取得を目的とする場合などは、必ずしも自宅通学圏に進学先があるとは限りません。希望の進路とかかる費用のバランスを見ながら、自宅通学圏で希望に近い進路を探すか、自宅外通学する場合はどちらが何を負担するのかなど、親子でしっかりと話し合いましょう。
費用節減のためには、「自宅通学」「国公立学校への進学」「受験校を絞る」などが効果的です。また、希望の進路に学費免除などをしている学校があるかを調べて、進学先別に総額を出してみましょう。
ただ、精査しすぎて受験に失敗すると、予備校の費用は進学費用と同程度かかってしまいます。現役での進学を目指しましょう。
家計を見直す
家計の見直しによる学費の捻出には、冒頭で説明した①のほか、②はあらゆる費目について、そもそも必要なのかという観点で点検してみましょう。③④のもらえるお金については、うやむやにならないよう、何に使うかはっきり決めましょう。
①現在の高校生の子どもにかけている教育費負担額を進学先の学費にスライドさせる。
②通信費、保険料、外食・レジャー費、マイカーの維持費など、家計全般を見直す。進学する子どものお小遣いは自分で稼いでもらう。
③祝い金など、祖父母や親族からの援助分を充てる。
④給付金、臨時収入、保護者の収入が増えた場合にはその分を加える。
借りるのは最後の手段。子どもの「奨学金」と保護者の「教育ローン」
進路を精査し、家計の見直しをしても間に合わない場合は、借りるという方法があります。当サイトの「教育費が足りない!? 奨学金を使用するときに知っておきたいこと」では、子どもが借りて卒業後に返済していく「貸与奨学金」を中心に説明していますので、ご覧ください。
一方「教育ローン」は親が借りて返済していくものです。最も一般的なのが日本政策金融公庫の「国の教育ローン」で、概要は以下の通りです。
融資限度額 | 子ども1人につき350万円以内 自宅外通学、修業年限5年以上の大学(昼間部)、大学院、海外留学(3カ月以上)の場合は450万円以内。 |
返済期間 | 15年以内 ひとり親家庭、交通遺児家庭、世帯年収200万円(所得132万円)以内の方、子どもが3人以上で世帯年収500万円(所得356万円)以内の方は18年以内。 |
金利 | 固定金利1.80%(令和4年7月7日現在。金利は金融情勢により変動) 家庭の状況により金利・保証料の優遇あり。 |
使用目的 | 学校納付金、受験費用、住居にかかる費用(敷金・家賃など)、教科書・パソコン代、通学費用、学生の国民年金保険料など |
対象者 | 融資対象となる学校の入学・在学者の保護者で、世帯年収(所得)が次に該当する方 子どもの人数1人...790(600)万円 2人...890(690)万円 3人...990(790)万円 ※世帯年収(所得)は上限額 |
返済することを考え、借りるのは必要最低額に留める
日本学生支援機構の奨学金や日本政策金融公庫の国の教育ローンは、他の金融機関よりも金利は低めに設定されていますが、金融情勢により変動します。多く・長く借りれば借りるほど返済額は増えるので、利用することになった場合でも、金額を必要最低限に留めることはとても重要です。
奨学金の返済は、新社会人になった後に貯蓄がしづらくなる原因にもなります。保護者の教育ローンは、老後資金の準備に影響します。貯めるのは難しくても使うのは簡単だということを忘れず、計画と見通しを持ち続けることが大切です。
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