想定外の浪人の支出
高校卒業~来年の大学入学までの学びの費用負担を考える
浪人は、今回の受験は希望どおりにいかなかったけれど、1年後には希望する大学に進学できるよう待機、準備している人のことです。その身分ははっきりさせづらい状態で、「浪人生」と名乗るのは自由ですし、予備校に通えば「予備校生」となります。
保護者としては、翌年の合格はもちろんですが、浪人期間中の経済的負担が気になります。自宅で生活する限り、衣食住などの基本生活費は高校時代と同じくらいですが、教育費は学び方で大きく差が出るからです。
保護者が、わが子の浪人中の教育費をあらかじめ準備しているケースは、まず、ありません。そもそも、大学4年間の教育費を完璧に用意することも簡単ではないのに、さらに1年間(場合によっては複数年もあり得る)の上乗せ支出をするなんて悩ましいものです。
予備校の費用、どれくらい?
浪人するかどうかは、突然の決定になる家庭がほとんどでしょう。そのため、お金の心配と、来年の合格という目標を達成するための手段の両方を天秤にかけて十分に考える時間はありません。
自宅で勉強すれば費用は抑えられるけれど、だらだら過ごしてしまいそうな気もします。目標達成できない可能性が高まるくらいなら、お金をかけても予備校に通う方がいいという判断をすることはままあります。
予備校の費用は学校やコースによって異なりますが、入学金と1年間の基本授業料で100万円程度はかかると考えておくべきでしょう。大学の費用と同じで医学部コースは数倍高額になり、個人指導など特別な授業を希望すれば、やはり負担は増えていきます。
預貯金を前倒しで使う? 教育ローンを利用する?
浪人が決まってから予備校の入学手続きを行うまでの時間があまりないことから、まずは大学入学で使う予定だった預貯金を、予備校の費用に充てるのが現実的です。
その上で、先取りして使ってしまった資金の穴埋めをどのようにするかを早めに親子で考えます。具体的には奨学金の利用や、元々利用する予定だった場合は利用額を増やすなどです。
事情があって預貯金を使えない場合は、教育ローンの利用も検討します。日本政策金融公庫が扱う「国の教育ローン」は、予備校も融資の対象となっています。ただし、わが子が選んだ予備校が、必ずしも融資対象になっているとは限りません。
「予備校」という進学先はない?
大学進学のための予備校は、文部科学省による学校区分によると「専修学校一般課程」「各種学校」「左記以外の者」のいずれかに分類されます。「左記以外の者」は、無認可の予備校や私塾です。
教育ローンの利用を検討せざるを得ない状況であるなら、選択肢としている予備校が融資対象であるかどうかは入学手続き前に必ず確認しましょう。
増えた教育費を負担する人を決める
子どもにとっては大切な大学進学。大学で人生が決まるわけではありませんが、それなりの影響があることを保護者も知っています。子どものため、大学の費用に加えて予備校の費用も負担してやりたい気持ちは山々でしょう。
けれど、保護者には保護者の都合があります。自分達の老後生活資金や住宅ローンの繰上返済分を予定外の教育費に充ててしまっては、結果的に子どもに負担をかけることになってしまいます。
予備校でかかる費用をどうするかについては、学ぶことと同じくらい大切な人生の課題です。誰がどのように負担するのか、親子でしっかり話し合うようにしましょう。先延ばしすると話題にしにくくなりますから、予備校入学前、予備校の費用の支払い前に話し合いの時間を作ってください。
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会