category:進学費用親子で読みたい
進学NEWS
2019.06.01

奨学金、返還方法の違いによるライフプランへの影響

貸与型奨学金を利用するとき、将来の返還月額を確認する方は多いのですが、これは将来の毎月の収入の範囲で返還が可能かどうかが気になるからでしょう。返還についてはもう一歩踏み込んで、返還方法の選択肢についても高校生のうちに親子できちんと理解するようにしてください。安心な返還方法を選んだつもりだったのに、家計やライフプランが苦しくなる可能性もあるからです。

返還月額を減らすと借金を抱えている期間は長くなる

日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用する場合、利息ナシの第一種と利息アリの第二種のいずれも、毎月の返還額と返還期間は、貸与総額に応じて一定の計算式で算出されるのが原則です(第二種は利率も加味されます)。

この原則の返還方式の他、第一種の方にだけ、「所得連動返還方式」という選択肢も用意されています。第一種は返還方式が2つ用意されていることから、原則の返還方式の方にも名前が付けられていて「定額返還方式」と呼ばれます。

所得連動返還方式は、所得が少ない場合は返還月額も少なくなる方式ですから、大学卒業後の収入に不安がある人にとって安心感があるようです。

奨学金240万円を所得連動返還方式で返済する場合の収入別返還月額と返還年数

総額240万円を借りた時、定額返還方式の返還月額は13,333円です。年収がずっと248万円と仮定すると、所得連動返還方式での返還月額は定額返還方式の約半分になりますが、返還年数は2倍の30年間になります。

年収が248万円ということは、月収は21万円弱で手取り額は10万円台後半ですから、返還月額が約6,600円少なくなれば、毎月のやりくりはそれだけ楽になるはずです。一方、22歳で大学を卒業して返還年数が30年間ということは、52歳まで借金を抱えているということです。

返済開始から10年経過後に住宅ローンを組もうとすると、本来組めるはずのローンよりも160万円少ない額しか借りられません。奨学金が160万円ほど残っているからです。また、子どもが生まれた場合、子どもの未来のための貯蓄額は、奨学金の返還分少なくなりかねません。

毎月の返還額が少なければ、その月は助かりますが、借金を長く抱えているのは得策ではありません。できるだけ早く返してしまう方がいいのです。

収入に比例して増減する返還月額は、1年遅れ

一般的には、30年間にわたって収入が248万円で固定することはなく、増えていく可能性の方が大きいでしょうし、収入が増えれば返還月額も増えて返還年数は短くなります。

収入に連動する返還額は、前年の1~12月の収入から算出された所得に応じて、その年の10月から12か月間払います。所得が支払いに反映されるのは、ほぼ1年遅れということになります。

所得が順調に増え続けているのであればいいのですが、減収になった年は支払いが苦しくなります。前年の所得に応じた返還月額を、減った所得から支払わなくてはならないからです。

無理は禁物だが、少しの頑張りと適切な手続きを

第一種の定額返還方式と第二種の返還は、毎月の返還額を少しだけ減らしたい、キリのいい1万円にしたいというような変更はできません。借りた総額から算出された返還月額と返還期間は、返還が終わるまで変更できないのです(繰上返還は除く)。

ただし、返還が苦しくなったときに、本来の半分または3分の1に減額して返還する「減額返還」や、返還を先送りする「返還期限猶予」というお助け制度が用意されています。家計が苦しい時には利用したいものですが、第一種の所得連動返還方式と同じように、いずれも返還期間が延びてしまいます。

奨学金を申し込む時には親子でライフプランを立てて先を見通してみましょう。本当に返還が苦しい時にはお助け制度を利用できることを理解して、貸与奨学金を利用すればいいのです。同時に、返還方法や保証制度の選択は十分に考えて選ぶようにしてください。

ハッシュタグで関連記事を見てみる
#ファイナンシャルプランナー , #奨学金 , #奨学金の返還 , #菅原直子
[菅原 直子]
naoko_sugawara.jpg
プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント

会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。

■著書

共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)

『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)


■所属団体

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

子どもにかけるお金を考える会

働けない子どものお金を考える会

インフォメーション