遠距離通学と一人暮らしの選択で迷った時の費用の考え方
私立の一人暮らしは4年間で1,000万円以上
「一人暮らしをして私立大学に通ったら、学費を含む生活費は1年間あたり約250万円かかったという調査結果があります(日本学生支援機構「学生生活調査」H28年度)。4年間では約1,000万円です。学費の計算には入学金を含めていませんし、授業料の減免や免除を受けているケースは実際の支払額を回答していますから、多くの人の負担はもっと高額になるはずです。
この金額は、学費も生活費も平均額で計算した結果です。理系や芸術系の場合は、学費が平均よりも高めですので、その分の金額で、さらに費用は高くなるはずです。
1,000万円を超えるような金額を、わが家は用意できそうもない!と悲鳴を上げたくなる保護者は少なくないでしょう。
その結果、子どもに対して、自宅から通える大学を選ぶようにと、保護者側の要望を伝えることも珍しくないと思われます。
ただ、子どもの学びたい学部・学科が、自宅から通える範囲にあるとは限りません。普通であれば下宿せざるを得ない距離ではあるけれど、新幹線を利用すれば通える範囲にある学校選びをどのように考えるかで迷います。そのような学校を選択肢に入れるか外すかということですね。
一人暮らしは高いと決めつけず、わが家にとって、自宅通学と一人暮らしのいずれが納得できる支出になるのか、冷静に計算してみてから学校選びをしてもいいと思います。
通学費と住居費を比較してみる
一人暮らしの場合、子どもの生活費に占める一番大きな支出は家賃です(表の赤色部分)。
自宅通学ではかからないこの支出に、通学費と食費を加えて比べてみてください。
自宅通学費+自宅食費 > 下宿通学費+下宿食費+住居・光熱費
→自宅通学の方が生活費が高い
自宅通学費+自宅食費 < 下宿通学費+下宿食費+住居・光熱費
→一人暮らしの方が生活費が高い
*通学費と食費と住居費以外の支出は大きな差はないものとして、計算から除外
住まい別に通学費と食費と住居・光熱費を加算してみて、金額の高い方が、生活費が高いということになります。
たとえば、高崎から東京まで新幹線通学すると、3か月定期券は21万7,870円(平成30年7月現在)ですから、年間87万1,480円となり、下宿の住居費を大きく超える金額であることがわかります。
ちなみに、費目ごとに比べる場合、食費の差は、もっと変化する可能性があります。自宅の食費は外食に限定した金額ですので、外食をせず、弁当を持っていけば0(ゼロ)円で、下宿との差は1年間に約30万円となります。ただし、この調査のルールでは0円であっても、家庭側で負担している食費は存在しています。
平均値を参考に、わが家の自宅通学と下宿の生活費を計算してみましょう。
通学時間の有効活用で遠距離通学も可能に
神奈川県の西側に在住で東京を越えて埼玉方面の大学に通う場合、相互乗り入れをしている私鉄を上手に使って遠距離通学している学生がいます。
JRを利用するよりも時間がかかる地域もありますが、交通費を抑えられるうえに、住まいによっては座って通学できるメリットがあるようです。座っている間は、テキストを広げたり、スマホで勉強する時間にあてています。
静岡在住で東京多摩地区に通う学生は、一人暮らしで家事にかかる時間が、通学時間よりももったいないと考えて遠距離通学をしています。
一人暮らしの方が自宅通学よりも生活費が高いという調査は十分に参考になりますが、わが子にどのような生活スタイル・通学スタイルが合っているのか、一人暮らしと自宅暮らしも含めて学校選びを考えていきましょう。
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- プロフィール : 菅原 直子(すがわら なおこ)
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)、教育資金コンサルタント
会計事務所向けオフコン販売、外資系生命保険会社勤務・同代理店経営を経て、1997年よりファイナンシャル・プランナー。公私立高校や自治体などで保護者・生徒・教員のための進学資金セミナーおよびライフプラン講座・相談会は関東を中心に10年以上にわたって300回超。新聞や雑誌への取材協力や執筆、働けない子どもに関する家計の相談も行う。地元湘南地域密着のFP活動も展開中。3男子の母。
■著書
共著『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)
『子どもの教育費これだけかかります』(日労研)
■所属団体
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
子どもにかけるお金を考える会
働けない子どものお金を考える会