category:進路選択親子で読みたい
進学NEWS
2024.10.01

進路を決められなくて悩んでいます。どうやって決めたらいいですか?

進路選択という大切な選択を前に、「自分の人生を左右するかもしれない決断だから失敗したくない」「何を決め手にしていいか分からない」「本当にこれでいいのかな?」など迷ってしまうことは仕方のないことだと思います。

しかし、決めないと前に進まないですし、その葛藤もつらいですよね。

今回は進路を決められないときにどうしていったらいいのか一緒に考えてみましょう。

■なぜ進路を決めるのが難しいのか?

多くの高校生の皆さんにとって、進路を自分で決めるのは大きなプレッシャーなのではないでしょうか。

それもそのはず、これまでは、多くの学校ではカリキュラムが決まっていますし、保護者の方も色々と選択のサポートをしてくれたりして(ご家庭の方針にももよりますが)、大きな選択をするのに慣れていない方が多いのです。
もちろんそれぞれが持っている個性による影響もありますが、実は「決める」という行為は、経験を積むことでだんだんと慣れてくるものだと思います。
(かくいう私も、決めることが苦手でしたが、慣れだと気づくことで、決断力がついてきました)

つまり、進路を決めるのが難しいと感じている人は、まだ決める経験が少ないだけなのです。

これからの時代は、はたらき方(場所、契約形態、職業など)、生き方(結婚などのパートナーシップ、出産、拠点など)が多様化していて、これまでの時代より「自分で決める」ということの重要性が高まってくると感じています。
ちょっとつらいかもしれませんが、進路選択は自分で「決める」経験を積む貴重なチャンスと捉えてみるといいかもしれません。

■合理的な要素だけでなく感情や感覚も大事な判断材料

進路を選ぶとき、多くの人は偏差値や就職率、コストパフォーマンスなどの「合理的な」要素に重きを置きがちです。もちろん、そういった要素は重要ですし、進学先を選ぶうえで考慮すべき一つの要素です。

しかし、それだけに頼って選んでしまうと、かえって迷いが深まることもあります。

なぜなら、進路選択は人によって様々な形があって、特定の正解がない個人的なものだからです。

当たり前ですが、進路を決めて頑張るのはあなた自身です。
そして人間、感情で動く部分も多い生き物なので、なかなか自分自身の納得感がないと頑張り切れません。

キャリアにおける意思決定論で有名なアメリカの心理学者ハリィ・ジェラットも、キャリアの意思決定においては、合理的な左脳的な要素(偏差値・就職率・コストパフォーマンスなど)を重視するばかりではなく、感覚的な右脳的な要素(好き・夢・しっくりくる感覚)も使う『全脳型アプローチ』を推奨しています。

そのため、もし今、右脳的な要素を軽視しているとしたら、そういったものも考慮して選択すると、自ずと選択は決まってくるかもしれません。

■失敗は怖いけれど、今の自分なり基準で決めてみよう!

色々な角度で考えたうえで、最後に何に重点を置くかは、自分なりの基準次第です。

左脳的な要素(偏差値・就職率・コストパフォーマンス)に重きを置いてもいいし、右脳的な要素(好き・夢・しっくりくる感覚)に重きをおいても、自分の納得感があればOKです。

決めることは怖いかもしれませんが「自分で決めた」ということ自体が貴重な経験であり、今後その道に進むための大切なエネルギー源になります。
(ちなみに自分で決めることが幸福度を上げるという研究もあります。こちらのコラム参照)

さらに、確かに進路選択は大切な決断ですが、選んだ道の先でやってみた結果違うと感じたら、努力は必要ですが変更することもできます。

私の周囲の活躍されているビジネスパーソンの方々も、初めからその道にいたという方は意外と少なく、
例えば、

  • 工学部に進んで研究員になろうと思っていたけど大学で学ぶうちにビジネスを創ることに興味を持って就職のタイミングで文転。理系で培った論理的な思考を活かして活躍されている方。
  • 経済学部に進んで貿易の会社に就職したけれど、社会人になってから医療に興味を持ち看護学部に入り直し。別のキャリアの経験を活かして、様々な人たちに寄り添った看護をしている方。

という感じで、直接思った道に進まなくても、ご自身なりに経験を活かしながらその時々で納得のいく選択をして働かれています。

そのため適度に肩の力は抜きつつ、じっくり時間をとって自分と向き合ったり、周囲に話を聴いてくれる人がいれば相談をしたりして「自分で決める」プロセスを味わってみましょう。
今のご自身にとって納得のいく選択ができますように。

◎今、前に進むための問いかけ!

左脳的な要素(偏差値・就職率・コストパフォーマンス)や右脳的な要素(好き・夢・しっくりくる感覚)を思いつくだけ色々書き出してみましょう。
そのうえで、どこに重点を置くのがしっくりきますか?


※出典:Gelatt, H.B. 1989,Positive Uncertainty :,A new decision Making Framework for counseling Journal of Counseling PsychologyVol.36, NO2 pp.252-256

[中村 文香]
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プロフィール : 中村 文香(なかむら あやか)

U-Discovery代表。国家資格キャリアコンサルタント。高校生からミドル世代まで、キャリアの転換期における意思決定や、周囲と協力しキャリアを築いていくためのサポートを行なっている。高校の進路選択では、人の心に関わる分野に興味がありながらも、就職で潰しがきくと、工学部を選択。北海道大学総合科学院総合化学専攻修了後、電子機器メーカーにて研究開発に従事。三十歳を目前に、今後のキャリアで本気で取り組みたいことを考えた結果、学生時代から関心のあったキャリア支援の道への転向を決意。同企業の人事部を経て独立。理系出身の分析力と大幅なキャリアチェンジの経験を活かした視点や、楽しみながらキャリアに取り組めるワークが好評。

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